第六章:雨の中の告白(2)


篠原台駅の前は人でごった返していた。

そのほとんどがカップルと家族づれ。

恭子の到着を待っている義行は無論1人だ。

自分の時計を見ると既に約束のam10:00の時間を過ぎていた。

(はやくきやがれってんだよ。)

こういうところで1人で待つということは非常に寂しいものなのである。

いらいらして恭子の姿を目で探す。

だが、何処にも見当らない。

(忘れちゃったんじゃねえの。あいつ。)

そう思った矢先のことだった。

突然。


「ちゃんと来たわね」


ふりかえると満足げにうなずいている恭子がいた。

「てめえ、遅いぞ。」

「といっても5分だけじゃない。そうかりかりしなくてもいいでしょ。」

特に悪びれた様子もなく、恭子は義行の手を引く。

「お、おい。」

「さ、行くわよ。早く行かないと間に合わないわよ。」

恭子に押され、義行は電車の切符を買いに行った。




映画館の中は思いのほか、すいていた。

(それにしても…)

こんなに大きな映画館で見るのは義行は初めてだった。

1000人ぐらいは入るのではないだろうか、そんなに大きなところだった。


「ほい、ポップコーン。」

「ん、ありがと。」


義行が恭子にポップコーンをいっぱいに詰込んだカップを渡すと自分の席に座った。

「いつ、始るんだよ。」

「もうそろそろ。…ほらっ」

指差す向こうには暗幕がひいていっている。

「早く始らないかな。」

ふと、義行は恭子の横顔を見た。

「うれしそうだな。」

「うん。だって、見たかったから。それに…」

「それに…?」

すると恭子は大きく頭を横に振った。

「な、何でもない。」

彼女の戸惑いを不思議に思う義行。

朝も強引に引っ張っていく様も疑問に浮かぶ。

(なんなんだ、こいつ?)

しかしその疑問を口に出すタイミングを逸してしまった。


『じーーーーーーーー』


「あ、始まった。」

やがて暗くなり、映写機が回りはじめる。

かたかたかた…という音がわずかに彼の耳をかすった。



知香は既に遊園地の前にたって、義行を待っていた。

彼女は時計に目をやると約束の時間を過ぎていることを知った。

『1:00をお知らせいたします。』

遊園地の校内放送が響きわたる。

「おかあさん、僕、ジェットコースターに乗りたいよ。」

「いい子にしていたらいいわよ。」

家族連れの客がどんどん入っていった。

その中に義行がいるかもしれないと一生懸命目で追うが見つけることが出来ない。

「…」

それでもあきらめず知香は待ち続けていた。

降り出す雨粒を受けながらも。

彼女は待っていた。



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