ひょっとこ斎行状記

「倶利伽羅地獄」

17編 全227話

能坂 利雄 著
村上 信弥 画
富山新聞 夕刊小説

1.天鵞絨船
第1話(最初の部分・以下省略)
「おおいっ。船が来るぞお!」
 雲一つないないだ春の海面を、長い眼鏡でのぞいていた物見台の弥吉が、潮焼けのしたたみ声を高いやぐらの上から破れるように叫ぶと、その拍子に、敷いて座っていたむしろのくずほこりが、きらきらと午後の陽差しに光って、下の網小屋の屋根へ落ちていった・・・・・・


第3話(一部分)
「慶次郎どのには、いつの場合だって一国一城の主君の地位が保証され、その器量も他の人々より勝っていた。剣の道にかけては穀蔵院一刀流をあみ出し、詩歌のたしなみは、格段の分別をお持ちであった。茶は利久におとらぬ手前のほどであり、一時は不識庵様(上杉謙信)の軍学を講じたほど軍略も虚をつき奇を放つ妙を得ていたものとうけたまわった。されば衆ににおとらぬ御身。にわか大名など遠くおよばぬ人となりであったと申されよう。人間の弱さはここで正体を暴露する。慶次郎どのを煙たがる己の保全を考える人の常、利家どのならずとも、刃を抱く心地はだれとも同じ。慶次郎どのの孤独はすぐれたるかゆえに、みずから負わされた運命(さだめ)であった。俗に申せば業の一字と申せようか」・・・・・・ 

2.ひょっとこ囃子

3.月夜の客

4.二上(二守)権現

5.牡丹刷毛

6.草蜻蛉

7.招かれざる客

8.魔風恋風

9.秘仏流転

10.狂い喋

11.極楽とんぼ

12.蜃気楼の人

13.ひょっとこ異変

14.地獄の使者

15.通り魔

16.雨月街道
(第1話〜第10話までのあらすじ)
 佐々家の梵天丸、大工甚六、前田家の富田治部、正体の知れない黒蜥蜴らを尻目に百万両を秘めた二上山倶利伽羅尊像は風来坊ひょっとこ斎の手に入った。仏像の秘文を読んで砺波山に向ったひょっとこ斎は前田の武士や黒蜥蜴に射たれて川に転落、行方不明となってしまった。ひょっとこ斎を見失った甚六、梵天丸、おせんは前田の武士にねらわれながら彼を探しに高岡から氷見に向う。一方、川に流れた秘文を手に入れた黒蜥蜴は砺波山地獄谷にほら穴をみつけて黄金を探したが、氷見宝達山のほら穴を記した地図のみしか発見できず、宝達山に向う。富田治部らの追うなかで黒蜥蜴げはこのほら穴で奇怪なキリシタン像を発見、そこへ死んだと思ったひょっとこ斎が現れた。高岡城ではこのひょっとこ斎こそ故利家公のおい前田慶次郎利太ではないかとわかって大あわて、城の秘密知られてはと彼を切ることに意見が一致した。

17.雲に飛ぶ鷹


付記
 ひょっとこ斎行状記は「倶利伽羅地獄」の巻を一まずこれで終ります。いずれまた続編か別の巻でお目見得することもありましょう。各関係方面から資料の収集や格別な御声援を得たことは限りない喜びでした。厚くお礼申上げます。長い間の御愛読を感謝いたします。




作成:2002/05/12

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