サンタの贈り物
オスカーワイルドという人が書いた「しあわせな王子」という1冊の本
ある国に、とても人気者だった王子様がいました。その王子様は若くして亡くなってしまい、
国民は王子様を偲んで、街を見下ろせるよう小高い丘に”幸福の王子”の像を建てました。
全身が金箔に包まれ、目にはサファイア、刀の柄には真っ赤なルビーが埋め込まれた
それはそれはきれいな像でした。
ある日、冬を越すためにエジプトに向かう途中の一羽のツバメがやって来て、王子の足下で
羽根を休めるために止まりました。ツバメが眠りにつこうとしたその時、大きな水滴が落ちてきたので
ふと像を見上げると、雨だと思ったそれは王子の涙でした。何と!王子の像が泣いていたのです。
ツバメが、「どうして泣いているのですか?」と尋ねると、「私は生きていた頃、毎日友達と遊び、
夜はダンスを楽しんだ。お城は高い塀に囲まれていたから、私は城の中の世界しか知らなかった。
だから、私の毎日は楽しく過ぎて行き、家来達は私を、『幸福の王子』と呼んでいた。
この丘の上に立っていると、街中の貧しい人々の生活の様子が良く見える。そんな光景に
心を傷めて泣いていた」と言いました。そして王子は自分の金箔を剥がし、貧しい人々へ与えてくれ
とツバメに頼んだのです。群れからはぐれたツバメは急いで仲間達に追いつかなければいけないため、
王子の頼みを断りました。ですが、「死んで、広場の像になってから、初めて町の人達の世界が
わかったんだ。この世の中は、なんて悲しい人達がたくさんいるのだろう。ツバメよ、どうか、今夜一晩、
私の願いを叶えてほしい」と王子が言いました。王子の優しい心に打たれたツバメは、王子の頼みを
聞いてあげることにしました。体の金箔、刀のルビー・・・王子は次々に自分の身につけている宝石を
貧しい人々へ・・・と、ツバメに運ばせました。そして、また貧しい人を見て、「私の目の一つを届けて
ほしい。私の目のサファイアは、千年も前にインドから持って来ためずらしい宝石なのだ」
と言いました。ツバメは、「そんな!あなたの目をくりぬくなんてできません」と言いましたが、
「いいんだよ。さぁ、早く・・・私の目を届けておくれ!」と言いました。
ツバメは泣きながら王子の目を一つくりぬくと、王子の言う人のもとへサファイアの目を届けました。
「今度こそ、僕はエジプトへ行こう!」ツバメはそう決めていました。そして王子に言いました。
「王子様、僕はエジプトへ行きます。今夜、仲間達は暖かいエジプトで巣を作っているところでしょう。
僕はそこできっと宝石を見つけて、今度の春、あなたに持って来ます。」幸福の王子は、はらりと涙を
流して言いました。「ありがとう、やさしいツバメ。でも、私は宝石をもらうよりも、今夜もう一晩だけ
願いを聞いてほしいのだ。」と言って、貧しい少女にもう片方の目を届けてほしい。と頼んだのです。
「王子様、もう一つしかない目をくりぬいて届けたら、あなたは何も見えなくなってしまうのですよ」
「それでいいのだ。早く、少女にサファイアを届けておくれ!」ツバメは、ハラハラと涙を流し、
王子の目をくりぬいて少女に届けました。目の見えなくなった王子にツバメは言いました。
「僕はね、王子様のそばにずっといることに決めました」「しかしツバメよ・・・、君はエジプトに
行くのだろう?」「いいえ、行くのはやめました。何も見えなくなった王子様を、一人ぼっちになんて
できません」ツバメはそう言うと、王子に今まで見てきためずらしいことを話して聞かせました。
王子は楽しそうに話を聞き、聞き終わるとツバメに言いました。
「ツバメよ。私のそばにいてくれるのなら、今話してくれたように町の様子を見てきて話してほしい。
そして、気の毒な人たちに、どうか私の体から金をはがして持って行って届けてほしい」
ツバメは、幸福の王子のことが大好きでした。王子の言うことならなんでも聞き、その願いを
叶えてあげたいと思いました。ツバメには、王子の願いは心からの願いだとよくわかっていたのです。
次の日から、ツバメは町の空を飛び回りました。
何日も日が過ぎて、冬の寒さは日に日に厳しくなりました。
そうしてツバメも、日に日に力がくなっていくのが自分でもよくわかりました。
ある夜、ツバメは幸福の王子の肩にとまり、静かに言いました。
「幸福の王子様、ついにお別れのときが来たようです。」
金の一枚も残っていない、今は鉛色の幸福の王子がほほ笑むように言いました。
「そうかい、エジプトに行くんだね。今まで本当にありがとう。」
「いいえ、王子様」ツバメは最後の力を声にして、やっと言いました。
「死の国へ行くんです。でも、死の国って眠りの国と兄弟なんでしょう?僕はゆっくり眠るんです。王子様」
そう言うと、ツバメは肩からすべり落ち、幸福の王子の足元に横たわりました。
そして、そのまま本当に眠るように死んでしまいました。
そのとき、王子の胸の中でも、パチンと音をたてて、鉛の心臓が二つに割れました。
王子もまた、死んだのです。
朝、町の町長さんたちが広場に集まり、金のはげた鉛の幸福の王子をとりこわすことに決めました。
誰が見ても、幸福の王子は美しい姿ではないと言うのです。
それに、ツバメまで死んでいるとなると、なんだか汚らしいという人もいました。
王子は火の中で溶かされました。
けれども、どうしても鉛の心臓だけは溶けませんでした。
その様子を天国からごらんになっていた神様が天使に言いました。
「本当に尊いものを二つ、ここへ持って来なさい」
天使は地上に舞い降りて、幸福の王子の心臓とツバメのなきがらを神様に届けました。
神様は天使をほめて、こうおっしゃいました。
「ツバメは、天国の庭で歌わせよう。幸福の王子は、いつまでも私のそばにいてもらうことにしよう。」
|