《心からの謝意を込めて――》
一 喫茶店『モカ』にて
アリクイのように肩を落としている日比谷に、トナカイのごとく角を立てている僕は言った。
「もう帰っていいか?」
「ま、待ってくれ」
日比谷はそのクマのような巨体を揺るがしガオーと咆えた――りはせず、必死の形相で向かいの席から僕のシャツの裾をガッシとつかんだ。
「離せよ」
「なあ、頼むよ」
「断る」
「そんなこと言わないでさ」
「いくらおまえの頼みだからって、変質者になるつもりはない」
「なに言ってんだよ。一人のかよわい女の子を悪の道から救い出すんだって。正義の行いだよ、これは」
「女の子の後をつけ回すどこに正義があるって言うんだ。そんなら自分でやれよ」
「だから俺は面が割れすぎてるんだよ。優子はもちろん、その友達の女の子たちまでみんな俺の顔を知ってる」
「なら諦めろ」
「そんな冷たいこと言うなって」
「ぜんぜん冷たくなんかない。とにかく僕はやらない。頼むんならほかの奴に頼め」
「それができてたらとっくにそうしてるさ。こんなこと頼めるのは信頼できる久保しかいないんだって」
「暇をもてあましてる、じゃねえの」
僕は思いきり冷たい声を出したが、日比谷がシャツを離す気配はなかった。ため息をつき、浮かしかけていた腰を落とす。日比谷はほっとした表情を浮かべて、
「ほ、ほら、まだなんか食いたいもんあったら頼めよ、今日は俺のおごりだからさ」
取り繕うように言った。僕はちらりとメニューを横目で確かめ、「ホップステップチョコレートサンデー」と言った。
「オーケーオーケー。すみませーん、ホップステップチョコレートサンデー一つ!」
日比谷はカバのような低い声で注文すると、僕に向き直った。
「で、先ほどの件なんだが……」
「それとこれとは別」
「わ、わかってるって。別にそんな気はねえよ」
どうだか。
僕は慌てて否定する日比谷をギロリとにらんだ。
真夏の太陽光線が究極兵器のごとく照りつける八月。レンガ風のタイルで内装を統一されたいささかクラシックな喫茶店『モカ』。
僕はそこの四人座席に、クマのような巨体が特徴的な友人――日比谷雅司と差し向かいで座り、ホップステップチョコレートサンデーを待っている。
夏のさなか、むさい男と向かい合ってデザート類を食う。なんて素敵な人生経験。神様に唾を吐きかけたい気分だ。
僕は改めて目の前の日比谷を睨みつけた。日比谷はその巨体を縮こませ、オドオドと視線をさまよわせ、時々上目遣いでチラチラとこちらを見ている。
はっきり言ってキモチワルイ。
日比谷とは中学からの付き合いで、今は同じ大学で語学のクラスが一緒という、まさに腐れ縁のオリンピック代表選手みたいな関係だ。なにか特別なスポーツをやっているわけでもないのにクマみたいに身体がでかくて、そのくせ心臓はミジンコみたいに小さくて、ついでにその目はパンダみたいに優しく可愛げで、性格は盲導犬のように穏やかで、といった感じの日比谷は、およそこの世の「意外」という言葉を一身に背負って立つことのできる男だ。
だがそんな温厚で誰からも好かれる――なんせこのひねくれ者の僕ですらなんだかんだ言って日比谷のことを気に入っているのだから――日比谷にも、致命的な欠点が二つあった。
一つは、やはり同じ語学クラスに所属している彼女。彼女のことになると、日比谷は世間一般にはノロケと呼ばれ、僕たち友人連中の間ではシラケと呼ばれている、愚にもつかない思い出話を、それこそ立て板に水の勢いで話しつづける。しかも話の間、興奮のあまりそのゴリラみたいに太い腕をぶんぶんと振りまわす。聞いているこっちはたまったものではない。肉体的恐怖と精神的責苦を同時に味わうことになる。
だがそれはまあいい。カルガモが交通渋滞を引き起こした程度の、その無邪気さを微笑んで見ていられるレベルだから。
だがもう一つの欠点、こちらがちょっといけない。カルガモどころの話ではない。もう半端なレベルではないのだ。
それは妹――優子ちゃんというらしい――に対するとろけっぷりだ。
日比谷の妹馬鹿ぶり、それをどう言い表せばいいのだろう。例えて言うなら、「日比谷が妹の頼みを断ったらしいぞ」という言葉よりも、「彼女が泣いて止めるのを振り切って、日比谷がハチ公前でアフリカゾウと一緒にゴーゴーダンスを踊ってるらしいぞ」という言葉のほうがまだ信じられる。それぐらい日比谷の優子ちゃんに対する熱狂はすごい。なにかと理由をつけては、妹のために行動して見せるのである。彼女などはちょっとした嫉妬まで感じているらしい。まさに「目の中に入れても痛くない」存在なのである。
そして今日、その妹馬鹿ぶりが、進路を西にずらしたはた迷惑な大型台風のごとく僕を直撃したのだった。
「なあ、そろそろ返事を聞かせてくれないか?」
テーブルに届けられたホップステップチョコレートサンデーと口の間で黙々とスプーンを往復させる僕に、日比谷が恐る恐るといった感じで言ってきた。
僕はエントロピーを低めて往復運動を止めると、静かに言った。
「そろそろもなにも、さっきから言ってるだろ。断る」
「おまえ、食うだけ食って、あとはなにもしないつもりか!」
日比谷が目をむいた。
「最初からそう言っておいただろ! わざとらしい態度はやめろ!」
僕はテーブルの上にスプーンを叩きつけた。視界の端には心配そうにこちらの様子をうかがうマスターの顔。心の中で謝罪しつつ、僕はこれまでの不満を日比谷に向かって一気に吐き出した。こちらはもう一時間も足止めを食らっているのだ。
「いいか、よく聞け。これは僕の友人としての心からの忠告だ。おまえが妹の優子ちゃんをすごい気にかけてるのは知ってる。それはとてもいいことだと思う。でもな、いくら優子ちゃんの素行が怪しくなったからって、人をつかって後をつけさせるなんて問題外だ。優子ちゃんのプライバシーはどうなる? 僕は優子ちゃんのことはよく知らない。おまえの妹で、おまえが優子ちゃんに異常なぐらいにまいってるってことぐらいしか知らない。でもな、たとえ優子ちゃんがイルカにフィンを贈ろうがエリマキトカゲにマフラーを贈ろうが、それは優子ちゃんの自由だ。可愛い妹が心配なのはわかる。でもいいかげん妹離れしろ。これをいい機会だと思ってな」
僕は日比谷に見せ付けるようにフウと大きくため息をつくと、スプーンを取り上げて再びホップステップチョコレートサンデーに取り掛かった。
僕の言葉がさすがに堪えたのか、日比谷はしょんぼりとうつむいていた。言い過ぎたかな、と思わないこともない。だが仕方がない。これぐらい厳しく言わなければ今の日比谷には効果がない。
だが僕の考えは甘かった。日比谷は顔を上げると、明らかに意図的なウルウルした目で泣き落としを図ってきたのだ。
「久保、頼む、この通りだ、おまえに断られたらすべてが終わりなんだ、頼む、頼む〜〜〜〜〜」
日比谷は歌舞伎役者も顔負けの時代がかったアクセントで僕に詰め寄ってきた。その顔を見ていると、この男がクラスの女の子に人気があるという事実を天に呪いたくなる。
わかっている。これは今までさっぱりモテた経験のない僕のひがみだ。高校のときに一度だけラブレターなるものをもらったことがあったが、「名前ぐらい書け。そもそもほんとに好きなら直接来い直接」などといった硬派(?)を気取って、指定された場所には行かなかった。日比谷などは「素直に行ってみろよ。いい子かもしれないぞ」と言っていたが、僕は「好きになってくれる子と付き合いたいんじゃない。好きな子と付き合いたいんだ」などとわかったようなわからないような理屈をこねてそれに答えた。その後も「好きな子」を見つけられない僕は、大学生になった現在でも、したくもない独り身を貫きたくもない主義でもって理論武装しているという次第だ。
つまり、僕はこういうひねくれた人間なのだ。そもそも今の男に求められるものは「一に優しさ、二に気配り、三、四がお金、五に最低限度のルックス」といったところだろう。(優子ちゃんに関わることを除けば)優しく気のいい日比谷がもてることはあっても、こんな僕がモテることはおそらく金輪際ないのだ。
僕が一人でふてくされていると、今この瞬間「僕の憎悪の対象コンテスト」を開いたら間違いなくぶっちぎりの一位であろう日比谷が、扁桃腺にかかったオットセイみたいな声を上げた。
「た〜〜〜〜〜の〜〜〜〜〜む〜〜〜〜〜」
ガラガラとしたなんとも不気味な声音。シーパラダイスのお姉さんでもさすがにこれには逃げ出すに違いない。
いいかげん疲れはじめていた僕は、これ以上貴重な時間を浪費しないために少しだけ妥協することにした。
「……ハア、わかったよ、一日だけだぞ。必要経費とは別に五千円で勘弁してやる」
「一週間!」
「おのれは……二日」
「六日!」
「三日。譲歩はここまでだ」
「よし、三日」
日比谷が心底ほっとしたようにうなずいた。
こんなことならもっと徹底的にたかっておけばよかった。僕は心の底から後悔していた。
その日の夜、日比谷から電話がかかってきた。
「久保、早速頼む。どうやら優子の奴、明日新宿のアルタ前で待ち合わせらしい。電話で話しているのをしかと聞いた」
「何時だよ?」
僕はぶっきらぼうに聞いた。
「すまん、そこが聞き取れなかった」
…………は?
僕は顔が引きつるのを自覚した。
「ちょっと待て。じゃあなにか? 朝早くからおまえの家を張ってろってことか?」
「そういうことになるな」
「…………」
僕は日比谷に盛大なため息を聞かせるために大きく息を吸い込んだ。
だが、これから吐き出そうというときには既に電話は切れていた。
二 尾行一日目
次の日、朝七時に起きた僕は――いつもは早くても十時だ――八時半に住宅街のど真ん中にある日比谷の家についた。さすがに日比谷の家に直接原付を置くわけにもいかず、しばらくうろうろとしてとめておけそうな場所を探した。結局駐車場に十分な余裕のあった近くのアパートに置いた。
(これで罰金でも食らったら)と僕は考えた。(日比谷に請求しよう)
当然のことだ。
僕はてくてくと歩いて日比谷の家の前に戻ると、電柱の影にもたれかかった。マルボロの箱を取り出して一本口にくわえる。今日は念のため五箱用意してある。これまでの最高本数を記録するかもしれない。
半箱ほど吸ったところで閂が外される甲高い音が聞こえた。顔を半分だけ出してうかがうと、日比谷に写真で教えてもらった女の子――妹の優子ちゃんが門から出てくるところだった。なんとも悲しい初対面だ。
優子ちゃんはデニム地のパンツにオレンジ色のノースリーブという格好だった。決して目だつ容姿ではないが、格好もあってかなりかわいく感じる。写真で見たときの年相応の女の子という印象と違い、実際の優子ちゃんは大人しそうな外見の中にどこか一本芯の通った雰囲気を発している。
『優子がさあ、最近夜遊びにはまったらしくて、深夜にならないと帰ってこないんだ。なにをしてるんだって聞いても、お兄ちゃんには関係ないでしょ、ばっかりでさあ。もしかして悪い男にでも引っかかったんじゃないか心配でさあ』
僕は日比谷の泣き言を思い出した。今見たところではそんな感じはまったく受けない。夜遊びにはまっている連中というのは、多かれ少なかれどこか奔放な雰囲気を感じさせるものだが……。
僕はそんな疑問を抱きながらそっと電柱の影から抜け出して優子ちゃんの後を追った。
はてさて、どうなることやら。
ガタンゴトンと京王線に揺られること三十分。僕は今新宿アルタ前の広場の人ごみの中にいる。マルボロを口に加えながら、うろうろこそこそ。
優子ちゃんも広場にいる。一人ではない。女の子と一緒である。
優子ちゃんと向き合うその女の子は、黒地にところどころ白い模様の入ったワンピースという、九官鳥とタメをはれるような地味な格好をしていた。肩ほどの長さまで伸ばしている髪も、櫛を入れただけという感じ。色気のかけらもあったものではない。容姿も……まあはっきり言っていいほうではない。どこか萎縮したような気配を発しつつ、少しうつむきがちに優子ちゃんと話している。
二人は落ち合って十分経つというのに動く気配がない。ほかにも待っている人物がいるようだ。男だろうか。
しばらくして、新たに二人の女の子が優子ちゃんたちの前に現れた。こちらは先の女の子に比べてまたえらく派手だった。カナリヤもかくやという色の組み合わせで、とても言葉では説明できそうにない。さらにその極彩色を引き立てるよく焼けた肌。その極悪なまでのコントラストはとてもすばらしい。もしカナリヤの品評会に人間部門があれば、彼女たちの入賞はまず間違いないだろう。
四人は横一列に並んで歩きはじめた。ときどき向かいからの人ごみを避けるように九官鳥さんが一歩後ろに下がる。彼女はやっぱり俯きがちで、どこかオドオドとしているように見えた。
僕はそんな九官鳥さんを見てなんともいえない苛立ちのようなものを覚えた。
(なにそんなオドオドしてんだよ)
心の中で九官鳥さんを叱咤する。
(もっと胸張ってみろよ。胸張って、顔上げて、周囲を見回してやれよ。あんたはなにも悪いことなんかやってやしないんだぜ)
だが僕の心中の声が届くはずもなく、九官鳥さんはあいかわらずだった。今は向かいから来る人とぶつかってにらみ付けられている。口がかすかに動いて見えるのは、すみません、とでも言っているのだろう。
僕は思わず舌打ちした。
僕は弱い奴が嫌いだ。これは別に肉体的な弱さを言っているのではない。精神的な弱さのほうだ。
雑踏の中で、コンプレックスにまみれてござい、というような感じでオドオドとしている人物を見かけると、苛立ちにも似た感情を覚える。その背中をどやしつけたくなる。年や性別に関係なく。
――もっと胸を張れよ。
――もっと堂々としてみろよ。
――あんたは狭い世界に閉じこもってるだけなんだぜ。
結局は人それぞれの問題なのだということはわかっている。だがそんな人種を見ていると、どうしようもなく苛立ちに似た感情――あるいは身勝手な同情なのかもしれない――を覚えるのだ。
僕は気を取り直して優子ちゃんに視線を戻した。優子ちゃんは九官鳥さんにちらりちらりと視線をやりつつ、カナリヤコンビとなにやら楽しげに話をしていた。その視線の中に名前のような優しさを感じるのは、兄の日比谷の友人である僕の贔屓目だろうか。
四人は紀伊国屋の前を通りすぎ、やがて伊勢丹デパートに入った。僕はそのまま素通りして向かいの映画館に入りたい気分だったが、そういうわけにもいかず、四人の後を追って入り口をくぐった。野郎一人で目的もなく伊勢丹デパート。すばらしい。
その後彼女たちはお決まりのコースを辿っていった。ブティックやアクセサリーショップを冷やかし、ファストフードで軽く昼食を取り、時間が来るとコマ劇近くの映画館へ、そして見終わった後は間を開けずに近くのカラオケボックスへとなだれ込んだ。
僕はポケットに突っ込んだファストフードのレシートと映画の半券をもてあそびながら、カラオケボックスがあるテナントビルに近いぼろぼろの喫茶店に入った。さすがにカラオケボックスの中までついていくことはできないからだ。窓際の席に陣取り、コーヒーを頼む。
コーヒーは五分とかからずにやってきた。一口すする。まずい。ものすごくまずい。水にこげ茶色のクレヨンを溶かしたような感じ。僕が自分で入れるインスタントコーヒーよりもまずい。新宿という一等地でこのコーヒーを出すとは、ある意味潔い商売をしている。
僕は時折クレヨンコーヒーをすすりながら、灰皿にタバコの吸殻を積み重ねていった。時間がゆったりと流れていく。道をせかせかと急ぎ足で歩いていく人々が、よくできた3D映像のように感じられてしまう。どこか作り物っぽく、そしてどこか嘘っぽい。
ふと視界の端を鮮やかな色をしたなにかがよぎった。それまでのどんよりとした変化のない風景に、突然鮮やかな現実を放り込まれたような感覚。僕はハッとして周囲を見回した。が、やはりせかせかと歩く人々の姿に変化はなかった。
(今のは……?)
僕はなおも窓の外をいろいろと眺め回したが、先ほど感じたものの原因となるようなものは見つからなかった。僕は、気のせい気のせい、と自分を納得させると、五箱目のマルボロを開けた。
その日はそれだけだった。三時間ほどしてカラオケボックスから出てきた彼女たちは、夏休みの夕方五時という時間にもかかわらず、ご解散あそばされたのである。
カナリヤコンビを残して、優子ちゃんと九官鳥さんは新宿駅に向かった。もちろん僕もその後につづいた。
駅のホームで電車を待つ間、優子ちゃんはなにやら懸命に九官鳥さんに話しかけていた。ときどき九官鳥さんが力なくうなずいている。そしてぼそぼそといった感じで優子ちゃんに言葉を発す。それを受けて優子ちゃんが快活に笑って見せる。典型的な友人を慰めるの図。遠くから眺めていた僕にその話の内容が聞こえるはずもなかったが、ただ二つだけ、九官鳥さんが優子ちゃんに言った言葉の内容の見当がついた。あまりに単純なその唇の動きから。
――ゴメンネ。
――アリガト。
相反する二つの言葉。それが九官鳥さんが優子ちゃんに向かって発した言葉だった。
どういう意味だろう。自分が場を白けさせてごめんね、ということだろうか。自分を誘ってくれてありがとう、ということだろうか。あるいはそもそも僕の勘違いなのかもしれない。
その日の夜、僕は日比谷のケータイに電話をかけた。
「はい」
日比谷の間抜けな声が響く。
「久保だけど」
「ああ」
どこか気まずそうな声。
「優子ちゃん帰ってるだろ」
「ああ、うん、帰ってきてるな」
「今日見てきたけど、女の子の友達と映画とかカラオケに行っただけだったぜ」
「そうか」
抑揚のない声。
「今何時だ」と僕。
「八時だな」と日比谷。
「深夜零時まで何時間ある」と僕。
「四時間あるな」と日比谷。
「妥当だよな」と僕。
「うん、妥当だな」と日比谷。
「門限内だよな」と僕。
「うん、門限内だな」と日比谷。
「で、これのどこに問題があるんだ?」
「…………ないな」
「じゃあ予定変更で今日でおしまいでいいな?」
「い、いや、それは困る」
慌てたような声。
「なんでだよ」
「今日はたまたまなんだって。いつもはもっと遅いんだ。ほんとだって。約束だろ。三日は頼むよ」
日比谷の必死な顔が頭に浮かぶ。
「でもなあ、僕の勘じゃ、あと二日ぐらいつけたところで変わりはないと思うぜ。優子ちゃんは別に問題ないよ。雰囲気見りゃなんとなくわかる」
「とにかく、遅く帰ってきたときになにをしてるのかが知りたいんだよ。明日も同じ時間に出かけるって言ってるんだ。頼むよ」
僕は痛くなった頭を押さえた。
三 尾行二日目
「かわらなーいかわらなーいにちじょーのひーびー、あーなたーはどうしてーいるーでしょーかー」
昨日と同じ喫茶店。
昨日と同じ窓際の席。
僕は冴えないラブソングを口ずさみつつ、自嘲気味に今の自分の状態を再確認している。
優子ちゃんと九官鳥さんとカナリヤコンビの四人は、昨日とまったく同じルートを辿った。アルタ前の広場で待ち合わせ。最初に優子ちゃんと九官鳥さん。しばらくしてカナリヤコンビ。ブティックやアクセサリーショップを冷やかし、ファストフードで軽く昼食。コマ劇近くの映画館――さすがに観るタイトルは違った――で映画。そしてカラオケボックス。
というわけで、僕は昨日と同じ喫茶店で無為に時間を過ごしている。この時間を活かすため、なにか哲学的なことでも考えてみようか。ニーチェ、カント、ヘーゲル、ハイデッガー。哲学の国ドイツの哲学者を思い浮かべてみる。だが知っているのは名前だけ。彼らがなにを考えなにを主張したのかなどかけらも知らない。だからそこで僕の無為な思考はストップ。ちなみにマルボロは三箱目に突入。
目の前のビルの三階あたりを見上げる。一階の案内板で確かめたところ、カラオケボックスは三階となっていたから、彼女たちはあのあたりの高さにいるのだろう。今ごろ楽しくポップしているのだろうか。激しくロックしているのだろうか。いやいや、意外と悲しげにバラードしているのかもしれない。
僕は過剰な冷房で少しばかり鳥肌の立った腕をこすりながら、なにげなくさらに一つ上の四階を見上げた。
四階の窓でなにかが動いた。
絵の具を全色ぶちまけたような独特の色使いのスカート。
カナリヤコンビだ。彼女たちは僕と目が合うと、慌てたように目を逸らして姿を消した。
僕を見ていた?
僕のことを知っている?
どうして?
僕は喫茶店を飛び出した。向かいのビルへ直行し、エレベーターで四階へ。
エレベーターが止まる。そこは一階の案内板で確かめたようにありきたりな学生向けの居酒屋だった。自動ドアの向こうに営業前の暗い店内が見える。
僕はあたりを見回した。廊下が左手に伸びており、突き当たりに階段がある。
(あそこか)
僕はそちらに向かった。見ると、階段を少し下がったところに踊り場のような部分が広がっており、大き目の窓がついていた。窓から外を覗くと、先ほどまで僕がいた喫茶店の窓際の席がはっきりと見渡せた。
「…………」
僕は無言で階段を降りていった。が、途中でその足を止めた。なにか話し声が聞こえたからだ。
「気づかれてないよね?」
「大丈夫でしょ。抜けてそうな顔してたもん」
そっと顔だけ出して様子を見る。三階のカラオケボックスの外の廊下、自動販売機の隣の椅子にカナリヤコンビが座っていた。
「でもマジだったんだ。二日連続だもん」
「ぜってー口だけだと思ったのに」
「ショック?」
「マジショック」
「ヤギのどこがいーんだろ」
「地味なとこじゃねーの」
「ブス専とか?」
「それあるある」
「ヤギ、前、メガネだったじゃん。それかもー」
「うっわー、キモチワルー」
カナリヤコンビはキャハハと笑った後、立ち上がってカラオケボックスの中へと戻っていく。会話はなおもつづいている。
「明日は? どーすんの?」
「アタシはパス。だからマジショックなんだって」
「オトコいねーもんな」
「うっせーよ」
カナリヤコンビの姿が自動ドアの奥に消えた。
僕は背中にじわりと湧いた汗を感じながら、嫌な想像を頭の中で組み立てはじめていた。我ながら本当に嫌な想像だ。どうして今の会話を聞いただけでこんな想像をしてしまうのだろう。
だが、おそらくその想像はそれほど的外れではないに違いない。
僕はダシに使われたのだ。
弱い人間の、その弱さを隠すための。
つまり、道化だったのだ。
その日の夜。
僕は部屋から日比谷に電話をかけた。ケータイにではなく、自宅の電話に。
呼び出し音が正確に五回繰り返された後、電話がつながった。
「はい、日比谷ですけど」
女の子の声。
「久保といいますが、日比谷くんはいるでしょうか」
「あ……」と女の子は驚きの声を上げた。「あの、はい、少々お待ちください……」
甲高い電子音が奏でる耳障りなメロディー。『もしもピアノが弾けたなら』だ。そのメロディーを聞きながら、僕はこれから自分が言おうとする内容をもう一度確かめた。頭は驚くほど冷静だった。
「代わりました」
聞きなれた日比谷の声が受話器から響いた。
「今日も見てきたぜ。変わったことはなにもなかったよ。優子ちゃん、もう帰ってるんだろ。さっきの子がそうか?」
「ああ、うん、そうだ」
「で、今度はいつなんだ? もうわかってるのか?」
「ああ、いや、それなんだが……」
「もう必要ない、だろ?」
受話器の向こうから驚いた日比谷の気配がした。
「あ、ああ、そうだ……」
「何故なら」僕は日比谷の言葉に覆いかぶせるように言った。「騙す相手の子たちがもう来ないからだ。だから僕はもう行く必要がない。彼女たちは二日で納得した。そうだろ?」
沈黙。しばらくして、「知っていたのか?」という日比谷の声がした。かすかに震えているような気がしたが、そんなことは今の僕にとってなんの慰めにもならない。
「今日、知った」
「……全部知っているのか?」
「さあな、どうだろう。ある程度の推測はしている。当たっているか外れているかはわからない。でもこれだけは確かだ。僕が妹思いの親友に騙されたってことだけはな」
「…………」
「釈明はないのか?」
「…………」
「じゃあ僕の推測を言うから、違ってたら言ってくれ」
僕は唾を飲み込んで喉を整えた。冷静だなんてとんでもない。やはり自分で思っているよりも興奮しているらしい。どうしようもないやるせなさが無意識のうちに身体に緊張を伝え、カチカチに強張らせている。
「たぶんこんなことだったんじゃないか? 一人の女の子がいる。自分に自信がなくて、いつもおどおどとしていて、弱っちい、そのくせ妙なところでプライドは高い、嫌らしい女の子だ。その女の子がつまらないプライドからちょっとした嘘をついた。付き合っている彼がいる、とでもいったところか?」
「…………」
「その子にしてみれば、ほんの軽い気持ちだった。でも思った以上に激しく追及された。クラスで嫌われてるんだろう、おそらく。そこで素直に嘘だと謝ればいいものを、その女の子はさらに嘘を重ねることでそれを逃れようとした。彼に会わせろ。実はもう別れた。別れてても会うことぐらいできるだろ。今はもう会っていない。電話番号は。ケータイから番号を消した。嘘なんだ。嘘じゃない。じゃあ証拠を見せろ。実は今も付きまとわれて困ってる、無視してるんだけど。じゃあ今度その付きまとってる彼を見物させてもらおう。とんとん拍子って奴だ。どうだ?」
「…………」
日比谷は黙して語らない。
僕は構わずにつづけた。
「その女の子は抜き差しならない立場に立たされた。だが幸いなことに妹思いの兄を持つ女の子にある話を持ちかけられた。助けてあげる。その代わりいくら払う?」
「…………」
「妹思いの兄は、妹のために一人の馬鹿な男を用意した。適当な理由をつけて――たとえば妹の素行が悪くなったから後をつけて確かめてくれ、みたいな感じの理由をつけて、馬鹿に自分の妹の後を付けまわさせた。後は簡単だ。妹が自分の後をつけ回す男をあたかもその女の子の元の彼のように仕立て上げればいい。女の子の話を確かめるべくやってきた子たちは、その男がぜんぜん違う理由から妹のほうをつけているとは思いもせずに、狼少女の言葉を真実と思い込んだというわけだ。かくして狼少女は妹に謝礼を支払い、資本主義の悪しき一例を実践したと、そういうわけだ」
「…………」
「さて、かくして道化は役目を果たした。経費とバイト代を合わせてしめて一万六千だ。今度会ったときにでも払ってくれ」
「騙されたから怒ってるのか?」
「騙された?」
僕は日比谷の言葉に初めて声を荒げた。
「違うね。僕は裏切られたんだよ。七年来の親友にな。僕がそういう甘えた弱い奴が嫌いなことを知っているくせに、その親友は利用したんだ。騙されたんじゃない。裏切られたんだよ、僕は。親友に託した信頼をな」
沈黙。受話器の向こうで、日比谷の奴は今いったいどんな表情をしているのだろう。
「明日、時間あるか?」
唐突に日比谷が言った。
「なんでだよ」
「妹に――優子に会わせたい」
「お断りだね。やり手婆みたいな女に会う気はねーよ」
「おまえの推測は」日比谷は言った。「確かに一部はその通りだ。だけど、おまえは勘違いしてる。逆なんだ。順番が逆なんだよ」
「逆?」
意味がわからない。
「明日、時間あるか?」日比谷は繰り返した。
「逆ってどういうことだよ」
「明日妹と会ってくれれば、そこで話す」
「…………」
「久保、こんなこと言っても言い訳にしかならねえけど、俺には俺なりの考えがあったんだ」
「妹がすべてに優先する、か?」
僕の皮肉にも日比谷はくじけなかった。
「俺は」搾り出すような声。「俺なりに久保のことを考えていた」
カッと身体中に怒りが満ちた。噴火するような表面的なものではない。奥底で渦巻く溶岩のような、深い混ぜもののない怒りだ。
結構。聞いてやろうじゃないか。
「明日、何時だ」
「久保」
「そこで終わりだ。金を受け取って、終わりだ」
日比谷は一瞬の沈黙のあと、静かに言った。
「わかった」
四 再び喫茶店『モカ』にて
次の日、約束した二時に喫茶店『モカ』に行くと、日比谷はすでに座席に座っていた。その横には一人の女の子。日比谷の妹君だ。表情はどこか固い。
僕は無言で二人の向かいに腰を下ろすと、コーヒーを注文した。ここのコーヒーはクレヨンコーヒーとは違って段違いにうまい。口直しにはちょうどいい。
「金は?」
僕が言うと、日比谷は茶封筒を差し出した。丁寧なことだ。さすが人格者。中身を出すと、福沢さんと新渡戸さんと夏目さんがきっかり一枚ずつ。
「確かに」
僕はそれを無造作にポケットに突っ込んだ。
「で、話ってのは」
日比谷が隣の妹君をちらりと見た。彼女が日比谷に向かってわずかにうなずく。
「久保さん、私から話します」
彼女は言った。昨日まではなにも疑問を持たずに「優子ちゃん」などと親しげに呼んでいたのだ。気分が悪いことこのうえない。
「兄から久保さんの話を聞きました。久保さんがどう考えているかも」と妹君。
しかし「兄」と来たか。気取りやがって。
「久保さんの推測、半分は合ってます。でも半分は違ってるんです」
「能書きはいいから」僕は短く言った。「さっさと本題を」
妹君はハッとした顔をすると、強張った顔でうなずいた。
「逆なんです」彼女は言った。「八木さんを助けるために久保さんを利用したんじゃないんです。久保さんがいたから、あんな計画で八木さんを助けようと思ったんです」
わけがわからない。
「どういう意味だかわからないね」
「八木さんが――あの黒いワンピースを着てた子、八木さんって言うんですけど、八木さんが嘘をついて追い詰められたのは、ほとんど久保さんの予測どおりです。ただそこから後が違うんです」
「どう」と僕。「どう違うの」
「八木さんは嘘をついていたのを打ち明けようとしてました。私がそれを止めたんです。そしてあの計画を立てたんです。そんなことをしたら八木さんがまいってしまうんじゃないかと思ったからです。でもそれだけじゃないんです。久保さんに計画に参加してもらうのも目的の一つだったんです。だから私、自分のために八木さんを利用したようなものなんです。謝礼なんて受け取っていません」
まだよくわからない。だが僕は言った。
「なんにせよ、親切面して友達を甘やかしたことに変わりはない」
言葉が止まらない。
「そういう八木さんみたいな人はね、どっかで傷ついて強さを得なきゃいけないんだよ。そうしないと、いつまでもいつまでもぐだぐだつまらないことを悩み続ける。謝礼を取ったなんて言ったのは言い過ぎた。謝る。でもな、君は彼女が立ち直るきっかけを奪ったんだぜ。わかってるのか?」
彼女はじっと僕の顔を見つめた。こちらがたじろぐほどの強い光がその目の奥にあった。
彼女は口を開いた。予想もしなかった言葉がその奥から飛び出した。
「変な顔」
………………。
…………。
ハ?
イマ、コイツハナントイッタ?
ようやくその言葉の意味が理解できたとき、僕は暴発などはせず、逆に唇の端を吊り上げて笑って見せた。
「変な顔けっこう。それでなにが言いたいんだよ」
「そう、言われたそうです」
「は?」
「八木さん、中学のときに好きな男の子にそう言われたそうです」
「……それで?」
「よくありますよね」彼女は淡々と「ブス、デブ、ブタ、臭え、汚え、バイキン、死ね」言葉を並べていく。
「どうなんでしょう。私にはわかりません。あんまりそういうこと言われたことないから」
まっすぐに僕の目を見つめる。
「そんな言葉を言われた人が、どうやって自分の心を守るのかわかりません。笑ってごまかす人もいるでしょう。ぜんぜん気にしない人もいるでしょう。でも――」
どちらもできない人はどうすればいいんでしょう。
彼女はそう言った。
「そういう言葉を受けて、まっすぐに受け止めてしまって、ずっと引きずってしまう人だっているんです。そういう人はどうすればいいんでしょう。やっぱり、弱い、そいつが悪い、どこかで開き直らなければいけない、そんな風に言われなきゃいけないんでしょうか。弱い心を、ちっぽけな虚栄心を守るためについた小さな嘘を、強く責められなきゃいけないんでしょうか」
痛いほどまっすぐな瞳。
「そういう人はどこまでもどこまでも自分を追い込んでしまうんです。八木さんがそうでした。別にどうってことないことなのに、どうしよう、どうしよう、って。こっちが気の毒になるくらい些細なことで悩んでしまうんです。自分を責めつづけるんです」
強い光。
「久保さん」と彼女は言った。「弱さは罪なんでしょうか?」
僕の目に差し込む。
「そうなのかもしれません。でも私は――私はそんなふうにただ切り捨てることができない。私も似たような経験があるから」
動けない。彼女の言葉に捕らえられ、動けない。
「私のときは兄がいました。いろいろと慰めてくれました。事情を説明してくれました。だから私は平気でした。そう――思います」
でも、と彼女は言った。
「でもやっぱりときどき考えたりしちゃいます。久保さん、どうして来てくれなかったんだろうって」
一通だけもらったラブレター。
「あのとき、兄が久保さんの知り合いじゃなかったら、私も引きずってたかもしれないから」
弱いと断定した。
「だから私、八木さんみたいな人を助けられたらって思うんです。兄が私を助けてくれたみたいに……」
本当は優越感に浸っていた。
「でもやっぱり……」
震える彼女の声。
「どうして来てくれなかったんですか?」
カッコつけていた。
「たとえ断られても……来てくれたら……」
椅子が床を削る音。
「ごめんなさい……さようなら……」
彼女が走るように店から出ていく。
僕は動けなかった。
こんなのはずるい、不意打ちだ、と思う。でも言えはしない。なにより、自分の胸のうちに広がる罪悪感がそんな見せ掛けの言葉を否定する。
「俺が言ったこと覚えてるか」
日比谷の声。僕はのろのろとそちらに顔を向けた。
「おまえに断られたらすべてが終わりだって言ったよな。お前じゃなきゃだめだったんだよ。おまえにやらせるから意味があったんだ。あいつは八木さんをおまえに救わせることで、おまえに罪滅ぼしをしてほしかったんだよ。それで自分も救おうとしていたんだ。それで優子の奴が吹っ切れるならと俺も思った。おまえもそれぐらいのことはするべきだと思った」
日比谷の声は優しげだ。
「な、俺にも考えはあったんだよ」
僕はただうなずいた。
「そうだな」
「不意打ちみたいなことして悪かったよ。でもな、おまえの考え方、前からどうかと思ってたんだ。確かにそういう考えもありだと思うよ。でも、決めつける前に一度考えてほしかったんだ」
「ああ」と僕は言った。「わかるよ」
日比谷は寂しげに笑った。
「俺たち、また元通りになれるといいんだけどな」
「あの子……」
「え?」
「あの子……優子ちゃんは、僕がおまえのダチだってこと知ってたのか?」
日比谷はにやりと笑った。頼もしいヒグマのような笑みだった。
「それが不思議なことにまったくの偶然なんだ。あいつ、おまえと同じ予備校に通ってたんだよ。おまえの口からラブレターの話を聞いたときはまじでびびったぜ」
僕は力なく笑った。そしてポケットに突っ込んだ福沢さん、新渡戸さん、夏目さんのお札トリオを取り出して、ヒラヒラと振った。
「サンキュ。ここの支払いはおごってやるよ」
「言ってろ」
日比谷は殴る真似をすると、喫茶店を出ていった。
僕は一人になると、タバコを口にくわえた。昨日の残りだ。
火をつけて、煙を大きく吸い込む。どうしようもなくまずく感じる。そのあまりのまずさに咳込む。苦しい。でもそのまずさが心の痛みから僕の気をそらしてくれた。
一時だけまずさを提供してくれたマルボロに感謝しよう。
夜。
僕は机の前に座っている。
目の前には昼間買ってきた一枚の便箋。
僕はボールペンを握り、最初の一行を書きつける。
筆圧の高い『日比谷優子様』という字が便箋に白と黒のシンプルなコントラストを生み出す。
我ながら苦笑する。まったくお堅いことだ。
さて、これから僕は一体なにを書くのだろう。なにを書きたいのだろう。正直言って自分でもよくわからない。
ただ考えてみたいと思う。この手紙を、彼女への言葉を、考えるきっかけにしたいと思う。そして彼女の言葉をまた聞いてみたいと思う。今まで僕の中にはなかった考え方を聞かせてほしいと思う。
すべてはそこからはじまるような気がする。
だから僕はこの手紙に書きつけよう。その内容がどんなものになったとしても、それだけを。
彼女への飾らぬ想いだけを。
どこまでも、どこまでも。(了)