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Notes 雑記 |
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特集1 『夕焼けの赫』をめぐって
拙作を取り上げるのは恐縮ですが、[MOZO] に掲載されている『夕焼けの赫』は、ラストの曖昧さから、賛否がはっきりとわかれた作品でした。それぞれの意見の主なところをまとめると、次のようになります。
賛……こういった曖昧なラストも含めて、一つの小説としてまとまっていると思う。 否……それまでの展開とラストで雰囲気があまりに違いすぎる。不自然だ。 その中でも特に強い疑問を呈したのが、レビューの『神の声』の作者であるさいやさんでした。さいやさんは、まず掲示板に「どうも理解できない」といった主旨の書き込みをして疑問を提示し、ついでメールにて『夕焼けの赫』に対する疑問、およびその問題点を、こまかく書き述べて送ってくれました。これに対して私(さと@管理人)もメールで答え、そのやりとりは最終的にはかなりの量になりました。 先日メールの整理をしていたとき、これらを通して読み返してみて、公開してみたら面白いのではないだろうかと考えました。読者と作者の間の垣根が低いオンライン小説の世界でも、ここまで忌憚ない意見のやりとりは珍しいと思ったからです。ここを見た方々になんらかのインパクトを与えることができるのではないか。そう考えました。 よって、以下にそのやりとりを掲載したいと思います。なお掲載にあたって特に手を加えたということはありません。直したのは、明らかな誤字・脱字や改行の乱れのみです。これは、その当時の雰囲気・臨場感をそのまま味わってもらおうと考えたためです。 また当然の事ながらネタバレです。本編未読の方は、適宜判断してお読みください。 最後に、メールの掲載を快く許可してくださったさいやさんに、改めてこの場で感謝の意を述べさせていただきます。本当にありがとうございました。 |
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一通目 00/08/25 さいやさんからさとへのメール 件名:『夕焼けの赫』感想
さいやです。
遅くなって申し訳ないです。 『夕焼けの赫』の感想と質問を送らせていただきます。 まず感想なんですが 良くも悪くも『挑戦的!』ですね。 今まで掲載されている作品と比べると 語り手の情景描写のなんと緻密なこと。 特に具体的なものを抽象的に扱う表現は好き。 表現に対して挑戦しているように感じました。 ストーリーは…『八 解答』を除いての話ですが…惹き込まれますね。 二つの舞台を使っての単調な繰り返しが 次へ次へと足を進ませていく。 リズムのために単語や単文単位では繰り返しを使ったことがあるけれど サスペンスで使っているのはおもしろいかも。 読者に対して…これが一番挑戦的でしょうか。 サスペンス? サイコホラー? で、どうなったの? さっぱり分からないんです……。 こういった手法で真実は?というのは嫌ではないんですが やはり『八 解答』に入ってからの展開のギャップは不自然過ぎませんか? 悪く言えば 登場人物と物語の前半と事件の発生だけを連ねてあるように なってしまっていると思います。 必然性のない箇所が多すぎると思うんです。 それで理解できない部分を質問させていただこうかと…。 で、質問です。 と思ったのですが、どう質問していいのかもわからない…。 実は何度も読み返しながらこれを書いていて 既に2時間が経過してしまっている…………。 死者の朋子が正を殺しに来たホラーだと考えると全て納得。 でもそうすると『七 真実』までは読者に無駄な時間を強いたことになる。 だってね…それだったらメチャクチャでしょ。 サスペンスの最終章でゾンビが犯人でした〜ってなったらね。 どの推理小説も犯人はゾンビや魔法使いで正解になってしまうことになる。 これはないでしょう。 サスペンスとして考えると???だらけ。 朋子はなぜ死んだ? 『「簡単だよ。考えるのをやめちゃえばいいの」耳に朋子の熱い吐息がかかった。 「わたしみたいに」』 の言葉を信じれば自殺? その日に屋上で何があったのかは不明だけど 美郷の話を信じるとすれば自殺の可能性はないので他殺。 正に色々聞き込んでる美郷の行動をも信じるなら正が犯人。 『 そして僕は気づいた。高倉の視線の先。高倉が見ているのは僕じゃない。僕の 横、つまり―― 僕の耳元でふふと楽しげな声がした。僕は悟った。これがあの日の後のできごとだ ということを。』 を素直に受け取ると、正人がいる場で美郷が朋子を殺したということ? 誰かかがうそつきということになるとそれ自体物語が崩壊しそうな気が。 どう質問していいのかも分からず…。 何が疑問だか理解してもらえるといいのだけれど。 頭はスッキリしてるはずなんだけど…申し訳ない。 |
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二通目 00/08/28 さとからさいやさんへのメール 件名:RE: 『夕焼けの赫』感想
さとです。
『夕焼けの赫』の感想ありがとうございます。 遅くなりましたが、質問に対する回答です。 まず、私が物語を書くに当たって考えた設定、 なにがどういう順番で起こったのかということを、 時系列に沿って並べてみます。 (こうしたほうが、わかりやすいと思うので) 1)五年前、(高倉)美郷と朋子の両親が離婚。 (高倉)美郷が母親に、朋子が父親に、それぞれ引き取られる。 美郷、相葉姓から高倉姓へ。 2)五年前、朋子の父親と正の母親が再婚。 正、相葉姓を名乗るようになる。 3)一ヶ月前、朋子、想いが募り、正に迫る。 正、これを拒否する。 朋子、ショックを受ける(しかし、自殺するほどのショックではない)。 4)その数日後、朋子、高倉に相談。 高倉、ほかの男と付き合ってみることを提案。 朋子、その提案を受け入れる。 明日屋上で正にそのことを告げる、と高倉に話す。 (高倉が知っているのはここまで)。 5)その翌日、朋子、正を屋上に呼び出す。 別な男と付き合うことにする、と告げる。 正、得たいのしれない衝動に駆られ、その場で朋子を犯す。 6)その翌日、朋子、正との関係について「考えるのをやめ」て、自殺。 正、警察に対して「朋子が迫ってくるのを拒否した」と話す。 (屋上で起こった出来事については黙ったまま) 警察、正の証言を朋子の自殺の原因と判断。 家族への配慮から、マスコミへの発表を控える。 7)正、屋上に上って夕焼けを眺めながら、『問題』について考え始める。 (自己満足的な罪の謝罪) 正、夢に悩まされはじめる。 (朋子の怨念。自分を拒否したことの罪の再確認を迫る) 高倉、朋子の自殺の原因に疑問を抱く。 朋子が正を屋上に呼び出したときになにかがあったのではと推測。 正に対する制裁の準備を整える。 8)準備が整った高倉、屋上で正に鎌をかけはじめる。 四日目に、高倉、確信を得る。 高倉、正に眠り薬を仕込んだショートホープを渡す。 一方、朋子も、確信を得る。 (正が自分の罪がどこにあるのかを認識していない) 朋子、高倉に憑き、現実世界で正を殺す。 また、夢の中でも本性をあらわす。 以上です。 これをふまえた上で回答を。 >で、質問です。 >と思ったのですが、どう質問していいのかもわからない…。 >実は何度も読み返しながらこれを書いていて >既に2時間が経過してしまっている…………。 > >死者の朋子が正を殺しに来たホラーだと考えると全て納得。 >でもそうすると『七 真実』までは読者に無駄な時間を強いたことになる。 >だってね…それだったらメチャクチャでしょ。 >サスペンスの最終章でゾンビが犯人でした〜ってなったらね。 >どの推理小説も犯人はゾンビや魔法使いで正解になってしまうことになる。 >これはないでしょう。 すみません、それです(笑)。 素直にジャンルをホラーとしておけばよかったですね。 でも、あれがホラーかというと、それはちょっと違うような気もします。 おそらくさいやさんが納得がいかなかったのは、 朋子に関する伏線がなかったからではないかと思います。 つまり、それらしい雰囲気を出していなかったのに、 いかにもサスペンス調の世界観で進めてきたのに、 それなのにあのラストというのがしっくり来ないのではないかと。 だとしたら、これに関してはまったく私のミスです。 申し訳ありません。m(_ _)m >サスペンスとして考えると???だらけ。 > >朋子はなぜ死んだ? >『「簡単だよ。考えるのをやめちゃえばいいの」耳に朋子の熱い吐息がかかった。 >「わたしみたいに」』 >の言葉を信じれば自殺? >その日に屋上で何があったのかは不明だけど >美郷の話を信じるとすれば自殺の可能性はないので他殺。 >正に色々聞き込んでる美郷の行動をも信じるなら正が犯人。 あの日、屋上で正が朋子を犯しました。 正に拒否され、正を忘れることを決心した朋子は、 その矢先に正に襲われ、ある意味、裏切られます。 混乱し強いショックを受けた朋子は、 その翌日、「考えるのをやめ」たわけです。 >『 そして僕は気づいた。高倉の視線の先。高倉が見ているのは僕じゃない。僕の >横、つまり―― > 僕の耳元でふふと楽しげな声がした。僕は悟った。これがあの日の後のできごと だということを。』 >を素直に受け取ると、正人がいる場で美郷が朋子を殺したということ? >誰かかがうそつきということになるとそれ自体物語が崩壊しそうな気が。 「あの日の後のできごと」というのは、 「それまで見ていた夢は過去の記憶の反芻だったけれども、 これは違う。朋子が死んだ日から後のできごとだ」 =(これまでの夢も含めて)単なる夢じゃないことに正が気づいたということです。 これで疑問が解消されればいいのですが。 またなにかわからないことが出てきたらメールください。 それでは。 |
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三通目 00/09/06 さいやさんからさとへのメール 件名:続『夕焼けの赫』感想
さいやです。
返事が遅くなりましたが丁寧な解説ありがとうございました。 設定を呼んでみると納得、の部分がありますが新たな疑問が…。 『 わたし? 高倉が「わたし」? 「あたし」じゃなくて? そして僕は気づいた。高倉の視線の先。高倉が見ているのは僕じゃない。僕の横、つまり――』 の部分をどう解釈していいものか。 朋子が実在してる? とすればホラーにしかとれない。 実在していないとすれば正の空想の産物になる。 が、親しい顔見知りの死に顔を想像するのは非常に困難。 ということは正は飛び降りた朋子を目撃してその死体も見た、ということになる。 それならば問題の解決よりも朋子を無残な姿にしてしまった罪悪感に捕われるのでは? 『「簡単だよ。考えるのをやめちゃえばいいの」耳に朋子の熱い吐息がかかった。 「わたしみたいに」』 この部分も朋子が実在すれば話が通るけれどホラーになってしまう。 正の空想の産物とした場合は 朋子が自殺した理由を正が知っていることになる。 裏切られたから自殺したと。 でも正は犯したから死んだと思っているはず。 誘ってきた女を後日でもレイプして 相手が裏切られたと思ってるなどと男が考えるでしょうか? これはないでしょう。 朋子のセリフが美郷のものだとすれば 美郷が自殺の理由を知っていることになる。 これもないでしょう。 自殺の前に朋子が美郷に相談したとするなら 自殺を止めるための手段を何らかこうじたでしょうから。 となると???です。 もう一点。 朋子が自殺した理由が不可解です。 好きな人に犯された翌日に自殺をするものでしょうか? そう簡単には自殺をしないと思います。 特に女性は精神的に強いです。 朋子の場合は美郷という相談者がいたのだから そうそう自殺などということを考えないのでは? 私の考える女性心理では 犯された時点で『裏切られた』より『求められている』と感じるのではないかと。 赤川次郎の小説のように 誰か死んでくれないと話が成り立たないから適当に殺した、なんて風に感じました。 口が悪くて申し訳ないですが 今までの作品が良かった分、無責任な感じがしました。 八章を直して欲しいなぁ、というのが本音です。 半分批判のようになってしまいましたが 質問か辛口の感想ととっていただけると嬉しいです。 ご迷惑でしたらもう書きませんからそう言ってください。 |
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四通目 00/09/06 さとからさいやさんへのメール 件名:RE: 続『夕焼けの赫』感想
こんばんは、さとです。
こういう指摘は嬉しいかぎりです。 迷惑だなんてことはぜんぜんありませんので、 今後もなにか疑問に思ったことがあったら、ぜひぜひご意見ください。 これは本当にそう思っています(笑)。 さて、質問に対する回答です。 >『 わたし? 高倉が「わたし」? 「あたし」じゃなくて? > そして僕は気づいた。高倉の視線の先。高倉が見ているのは僕じゃない。僕の横、つまり――』 > >の部分をどう解釈していいものか。 >朋子が実在してる? >とすればホラーにしかとれない。 >実在していないとすれば正の空想の産物になる。 >が、親しい顔見知りの死に顔を想像するのは非常に困難。 >ということは正は飛び降りた朋子を目撃してその死体も見た、ということになる。 >それならば問題の解決よりも朋子を無残な姿にしてしまった罪悪感に捕われるのでは? まずこれについては、とりあえず私の見解を述べておきます。 「八 解答」は、章の順番からもわかる通り、夢の中です。 それは、これまでの偶数章と同じです。 そして、この中では、朋子は夢の中の正に触れることができます。 この朋子はある意味「実在」しています。 ですから、正の空想の産物ということはありません。 また、「八 解答」において、正は朋子の顔を見ていません。 朋子は後ろから近づいてきました。 そして、正は後ろを振りかえることができませんでした。 顔が前方に固定されたままだと、例え耳元に口を寄せられても、 その人の顔は見えないと思います。 つまり、正は最後の「気づく」ところまで、 朋子が「普通の」顔をしていると思い込んでいます。 また、正は朋子の飛び降り現場も、その死に顔も見ていません。 頬にあたった朋子の髪が「べったりと濡れていた」ことが どういう意味を持つのかということについては、すべて読者の方の想像次第です。 正が罪悪感を明確に認識していないのは、それを認識してしまうと、 自分の精神が追い詰められてしまうからです。 『問題』について考えることで、それを(自己満足的な)罪滅ぼしと捉え、 無意識のうちに自分の精神を守っていたのだと私は考えています。 >『「簡単だよ。考えるのをやめちゃえばいいの」耳に朋子の熱い吐息がかかった。 >「わたしみたいに」』 > >この部分も朋子が実在すれば話が通るけれどホラーになってしまう。 >正の空想の産物とした場合は >朋子が自殺した理由を正が知っていることになる。 >裏切られたから自殺したと。 >でも正は犯したから死んだと思っているはず。 >誘ってきた女を後日でもレイプして >相手が裏切られたと思ってるなどと男が考えるでしょうか? >これはないでしょう。 >朋子のセリフが美郷のものだとすれば >美郷が自殺の理由を知っていることになる。 >これもないでしょう。 >自殺の前に朋子が美郷に相談したとするなら >自殺を止めるための手段を何らかこうじたでしょうから。 >となると???です。 すみません、これははっきりと朋子の台詞と認識して私は書きました。 ですから、正は朋子の自殺の理由をはっきりとは把握していません。 ところで、これまでの文と矛盾するようですが、この台詞をもって、 「正の空想の産物説」が覆るか、私は疑問です。 何故なら、あらゆる自殺が一種の思考停止だという共通認識が、 人々の間で一般的になっていると思うからです。 だとしたら、自己攻撃の衝動に駆られた正が、 夢の中で朋子が上の台詞を言うところを作り上げたとしても、 それほど矛盾はないと思います。 >もう一点。 >朋子が自殺した理由が不可解です。 >好きな人に犯された翌日に自殺をするものでしょうか? >そう簡単には自殺をしないと思います。 >特に女性は精神的に強いです。 >朋子の場合は美郷という相談者がいたのだから >そうそう自殺などということを考えないのでは? >私の考える女性心理では >犯された時点で『裏切られた』より『求められている』と感じるのではないかと。 >赤川次郎の小説のように >誰か死んでくれないと話が成り立たないから適当に殺した、なんて風に感じました。 うーん、ここは書いた私の中でも非常にジレンマを感じているところです(^^;)。 うまく説明できるかはわかりませんが、なんとか試みてみたいと思います。 もちろん、この説明をもってさいやさんが納得できるという保証は、 ぜんぜんありません。その場合はすみません。 まず、さいやさんの指摘はまったくその通りだと私も思います。 女性は心理的な面で非常に強いと思います。 実際、自殺者のうちの四分の三は男性らしいです。 そして、朋子の抱えていた正に対する強い未練も考えると、 屋上で正に抱かれたとき、悲しみよりも喜びを覚えたという可能性のほうが、 確実に高いと思います。こと性に関わることになると、 人はしばしば素直に本能に従う傾向があると思いますし。 こうなると、正と朋子はラブラブになって、 ハッピーエンドまっしぐらというところです(笑)。 これに関しては、ぶっちゃけた話、作品を書きはじめるにあたって、 「自殺の理由を複雑微妙なものにしたい」と感じたのが、 その根ざすところだと言えます。 借金苦、いじめ、学業の挫折、失恋、暴行、罪悪感。 こういったある意味定番の理由を避けたいと考えたんです。 それはあまりにパターンにはまりすぎてつまらない、と。 そこで、「好きな男に拒絶され、一転して抱かれたため」 という理由をつくりました。 最初は「無理があるだろうか」とも考えましたが、 いろいろ検討して、「いや、可能性は十分ある」と結論しました。 まず、生真面目で、一見そう見えなくても、実は頑固な女の子を考えます。 彼女は、自分の考えたことに対して、一直線でもあります。 たとえ「兄妹」という世間体があろうと、自分がいいと思ったことなら、 そこに向かってまっすぐに突き進む、そんな女の子です。 この生真面目さを、さらに「若さ」という要素が補強しています。 高校生ぐらいまでの人って、一般的に正義感がとても強いと思うのです。 それは外に対してはもちろん、内=自分に対してもです。 自分に対して「絶対律」みたいなものを課していることもあると思うのです。 これは、「ほかの人がどう言っても、それを一面正しいと認めても、 自分は絶対にそれをする(あるいは、しない)」ということです。 さて、彼女は好いていた義理の兄に拒絶され、実の姉に相談します。 そして、もう兄のことをあきらめることを決めます。 そして、これが、彼女にとって先に挙げた「絶対律」になりえたのではないか、 ということを私は考えます。 「もう兄のことを諦める。そう決めたからには、未練は持たない」 そういう「絶対律」です。 もちろん、未練を持たないなんてことは無理です。 しかし、意識的には、表面的には、彼女はそれを断行します。 それは彼女にとって、矜持であり、存在意義に関わるものでもあります。 それをすぐ次の日に、兄によって打ち砕かれます。 これは彼女にとって、二つの裏切りを意味します。 一つは、彼女の想い&矜持に対する裏切り。 もう一つは、彼女が当然兄もそうであろうと思っていた、 つまり、兄も己の「絶対律」を持っていて、 それは私と同じ方向であろうと思っていた、 そのイメージに対する裏切りです。 兄は自分を失わない高潔な人物などではなく、 ただ本能のままにひた走る醜く哀れな人物だったと感じてしまったのです。 それは、これまでの想いが強ければ強いほど、 反動も強いはずです。 精神的なショックと身体的なショック。 ひとまず家に帰ったはいいものの、 否応無しにこれからの生活を考えざるを得ません。 裏切られた兄とこれから、 十年二十年三十年と関わりを持っていかねばならない。 もしかしたら関係を改善できるかもしれない、 だが、そこまでにいったいどれだけの時間がかかるのだろうか。 その間、どれだけの苦痛を味わわなければならないのだろうか。 これは「考えるのをやめ」たくなるほどの、どうしようもなく深い絶望だと思います。 という風に考えて、「自殺する可能性有り」と結論しました。 ただこうやって書き出してみると、 これを作品内で説明できていないのだから、 この作品ではこの理由を選ぶべきではなかったかもしれない、と思います。 >口が悪くて申し訳ないですが >今までの作品が良かった分、無責任な感じがしました。 >八章を直して欲しいなぁ、というのが本音です。 これについては、正直リライトも考えていました。 朋子を引っ込め、単純に美郷と正の駆け引きにするか、 あるいは、根本から書きなおすという線です。 ただちょっと自分の中で書き終えたという気持ちが強くて、 今はモチベーションが湧きそうにありません。 やるとしたら、かなり経ってからになると思います。 その場合は、旧版と新版という形で両方掲載すると思います。 旧版だけ引っ込めるのはなんかずるいと思うんで。 めちゃくちゃ長くなってしまいました(笑)。 疑問があれば、とことん付き合いますので、遠慮なくお願いします。 それが自分の文章修行になるとも思いますので。 それでは。 |
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五通目 00/09/10 さいやさんからさとへのメール 件名:ありがとうございました
さいやです。
何度も丁寧な解説をありがとうございました。 さとさんの考える設定は理解することができたのではないかと思います。 納得はできませんが……。 やはり特殊な設定は描写の必要があるのではないかと思うので…。 最終章だけホラーというのは変だし(←しつこいって) 朋子の自殺するほどの潔癖は特殊だと思うし 正が甘ったれた自己弁護をしようとしているのに 思考停止まで追いこんだと自認しているのも変な気がするので。 作品の中だけで完結できている次回作を期待してます。 ……とこれは私の好みと言われればそれまでなんですけどね。 どうしてもルール違反だと思わざるをえないので。 熱心な読者のたわごとだとでも思っていてください。 お騒がせいたしました。 |
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六通目 00/09/12 さとからさいやさんへのメール 件名:こちらこそありがとうございました
こんばんは、さとです。
こちらこそありがとうございました。 さいやさんの指摘に対する言い訳(笑)を考える過程で、 『夕焼けの赫』のどこがまずかったのかを把握できたと思うので、 本当に感謝感謝です。 鋭いツッコミには何度ヒヤヒヤさせられたことか。 さいやさんが納得できなかったのは、 すべて『夕焼けの赫』のデキが悪かったという一事によるものだと思います。 作品の中でしっかりと説明しきれていない、という。 次はさいやさんをうならせるような作品を書きたいですね。 >やはり特殊な設定は描写の必要があるのではないかと思うので…。 >最終章だけホラーというのは変だし(←しつこいって) これはやっぱり問題でしたね。 最終章がなかったほうがスッキリしててよかったようです。 >朋子の自殺するほどの潔癖は特殊だと思うし >正が甘ったれた自己弁護をしようとしているのに >思考停止まで追いこんだと自認しているのも変な気がするので。 朋子の描写が少なすぎました。 というか、自分が納得しているだけの独り善がりになってしまいました。 いつもいつも同じ失敗を犯しているような……。 >作品の中だけで完結できている次回作を期待してます。 >……とこれは私の好みと言われればそれまでなんですけどね。 >どうしてもルール違反だと思わざるをえないので。 >熱心な読者のたわごとだとでも思っていてください。 いや、さいやさんの好みではなく、これは客観的事実でしょう。 さいやさんの指摘を受けたことで、 自分でもはっきりと失敗作と認識することができました。 次の機会があれば、そのときも容赦のないツッコミをお願いします。 それでこそ燃えるというものです(笑)。 ところで温泉は楽しめましたか? 今後は電車の中で変な人に会わないことを祈っております(笑)。 それでは。 |
特集1(了) |
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