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あれは、もう大分前の話になるのですが、私が初めてバイクを手に入れた時の事。嬉しくて、夜毎、族まがいの無駄走りを繰り返していたのですが、そんなある夜。町外れにある、ガキの頃通っていた小学校あたりを走ってみよう、なんて気を起こしました。町外れというか、まあ、山の中にあるんですわ、学校は。夜中の1時半ぐらいでしたかね。人家もあまりない森を走るのもスリルがあるかと思って。
通学路は、まるで変わっていませんでしたね。山腹に沿って道は走り、片側は、ずっと下の方に鉄道の線路が青い月の光を反射しているのが見える。道沿いには人家もなく、遙か先の国道と交わる辺りにガソリンスタンドがポツンと立っているだけ。これも、小学生の頃に見慣れていた、ちょっと寂しい通学路の風景のまま。懐かしいなあ、とか思いつつそこをそのまま走り抜け、これは建て直され、記憶とはまるで変わってしまった小学校の建物を見、その夜はそのまま帰りました。
翌日、同窓生と会った際にこの話をすると、「お前は何を見ていたんだ?」との反応が返ってきました。「山腹の通学路はきれいに舗装され、歩道やガ−ドレ−ルもちゃんと整備され、道沿いには何件もの住宅が建ち、見違えるようじゃないか、あのあたりは。そして、ガソリンスタンドは、もう何年も前に廃業してしまっているぞ」と、彼は言うのですね。
そんなバカな、と私は思いました。だって、それじゃ、私が前夜見た、昔と変わらぬ風景は何だったんだ。確かめに行きましたよ、すぐにバイクを飛ばし
て。が・・・そこには、真昼の光の中、昔のうら寂しい状態が想像付かないくらい開発の進んだ、つまり同級生が言った通りの、明るい通学路周辺の光景が広がっていたんですね。そうそう、ガソリンスタンドは確かに廃業したらしく、私が昨夜見た筈の建物は取り払われ、整地された跡地は駐車場として使われているようでした。それも、大分前から。
だけどねえ・・・私はその前の晩、確かに見たのですよね、走ったのですよね、子供の頃見たのと変わらない、あのうら寂しい山腹の通学路を。あれはどういう事なのか、いまだに分かりません。
(2002.2/11)
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