★クライヴ・グレッグソン&フルック from
England &
Ireland
●日時
・2001年12月11日(火)、開演午後7時〜終演午後9時30分頃
●場所
・shibuya nest(東京都渋谷区)
●登場アーティスト
・Clive Gregson/クライヴ・グレッグソン
・Flook/フルック

↑クライヴ・グレッグソンとフルックの面々。フルックは左から、寡黙でパワフルなエド・ボイド(ギター)、一本足奏法のセーラ・アレン(フルート、ホイッスル、アコーディオン)、踊るスキンヘッドのブライアン・フェネガン(フルート、ホイッスル)、ふとっちょ超絶バウロンのジョン・ジョー・ケリー(バウロン)。

↑パンフ裏。相変わらずヘンな斑点が浮き出てしまってますが、ご容赦。
最近知ったアイリッシュ・トラッドの新進気鋭の若手グループ、フルック。初来日をするという情報をFinsqeezeさんから教えていただき、さっそく行って参りました。
今回の会場は初めて行ったんですが、やー、失礼ながら小さな所ですね。椅子が50脚くらいしかなくて、高校生のアマチュアバンドあたりでも満席にできそうだ。音響もあまり良くないし、聴衆も立ち見も入れてざっと60人くらいしか入っていなかった。おまけに関係者が多かったから実質的な「お客さん」はもっと少なかったはず。なんかせっかくイギリスやアイルランドから来てくれたのに気の毒のような気も。。。
さて、今回はクライヴ・グレッグソンなる英国SSWのおぢさまとの合同ライヴでした。両者60分の演奏予定。ステージ前半に登場したクライヴさん、私はまったく知らない方だったんですが、アコギ一本による弾き語りで温もりのある渋い歌声を聞かせてくれました。熟達のギター、老練かつハートフルなおやぢ声、う〜ん、よかですな♪
元エニー・トラブルのリーダーで、解散後はリチャード・トンプソンのバンドに在籍したりクリスティーン・コリスターとデュオを組んだりして名を挙げ、その後ソロに転向、向こうでは相当名の通った方らしいです。
前半1時間はこの方の演奏を堪能しました。渋い演奏なんですがMCに入るとジョークの連発、なーんか隣に住んでる気さくなおっちゃん、という感も。(^
^) 大ベテランらしい余裕たっぷりのステージでありました。

↑クライヴおぢさま。画像が悪いのは私のデジカメがショボいからであります。^^;
休憩を挟んで後半はフルックの登場!若手のうえ初来日ということもあり、クライヴさんに比べてやや緊張気味なのが伝わります。スキンヘッドのブライアンさんが「コンバンワ」と挨拶した後ちょっとどもりながらバンド紹介を。「初めての来日で僕らはエキサイトしてるよ。『Flook』というのは、日本語でなんと言うのかわからないけど○○という意味で・・・」ああっ、エーゴがよくわからんから聞き取れなかったよう〜っ。(T_T) 嘆く私を置いてきぼりにMCは続きます。「まずは元メンバーのマイク・マクゴールドリックとモイア・ブレナックが作ったこの曲から・・・」(<このあたりあまり自信なし)
というわけで一曲目はアップ・テンポのナンバー、"Herve's"。セカンド・アルバム"Live
2001"ではラストに入っていた曲ですね。セーラさんの柔らかなアコーディオンをベースにブライアンさんの軽快なフルートが飛び跳ねるゴキゲンな曲で、バックのリズム隊二人もシャープでキレの良いプレイを聴かせてくれました。
ちなみにアルバムでもライヴでも彼らの曲はすべてインスト、ヴォーカルは一切無しであります。
しっかし、フルックと言えば「並列ニ気筒のダブル・フルート」(byマリーナ号さん)が売りなのになぜフルートが一人しかいないのだ?と疑問に思っていましたら、む、セーラさんがアコーディオンからアルト・フルートに持ち替えたぞ!そうか、この方は笛とアコーディオンの2つの楽器を操るのか、知らなんだー。
どきどきしながら待ち構えていると・・・いきなりエドさんのギターがざかざんっ!と大気を切り裂き、始まったのは、おお、ダブル・フルート全開の七変化疾走チューン"Flutopia"だっ!!デビュー・アルバム「フラットフィッシュ」のラストを飾る変化に富んだこの曲、タイトル通り個性の違う二本のフルートの妙技が堪能できるナンバーでわたしゃ大好きなのです。
ざくざくざくざく突っ走るエドさんのギターとジョンさんのスピード感溢れるバウロンに支えられて、セーラさんのアルト・フルートの重く幽玄な音色とブライアンさんの明るく軽快なフルートの音色とが絡みあいハモりあい、いやがおうにもテンションは高まるのです。曲半ば、緊張を抜くように曲調が一転、ギターだけをバックにとフルート二本のゆったりした掛け合いになり、さらにギターも抜けて二人のフルートのみでスローでどこかオリエンタルな曲調に再び変化。ここで聴かれるセーラさんのタンギングはなんか凄いですね。フルートについては素人ですがこんなに硬質で張り詰めたタンギングを聴いたのは初めて。たんったたんっ、たんっ、たたったんっと、笛というよりミュートしたギターの弦を弾くようなパーカッシヴな効果があって面白い。その上を流れるブライアンさんの美しいフルート・・・二人のフルートの神秘的な響きに目を閉じて聴き惚れていると、三たび曲調が変わって冒頭の疾走チューンに立ち戻り、ギターとバウロンが加わって一気にトップギア、クライマックスになだれ込むのです!こ、こりゃカッコええ〜〜〜っ!!(><)
もうこの一曲でいきなり私はノックアウトされてしまいました。こいつら、すげえや〜。
続く曲はシリアスなイントロから始まるアップテンポの"Beehive"。途中で転調してからがまたカッコええ〜んだ、この曲。この頃になるとメンバーの緊張も完全にほぐれ、観客にもようやく火が点きだしました。
セーラさんによるMCがあり(低音のハスキー・ヴォイスで、歌を歌わせてもハマリそうだ)、4曲目はフルートがメインのスローな曲。アルバム未収録のこの曲、「北フランス地方(ブルターニュ?)のトラッド」と言っていたような気がしますが、いかにもケルティックな哀愁あるサウンドでうっとり聴き惚れてしまいました。フロントの二人が叙情豊かに聴かせてくれましたね〜。
このフロントですが、笛二人と言ってもスキンヘッドのブライアンさんは軽快な中音〜高音のメロディ担当、どんぐりまなこのセーラさん(ほんと、お目目が大きいの)は低音〜中音のベースメロディ担当、と役割分担がされているのですね。かたや浮き立つような明るい高音、かたや落ち着きのあるしっとり濡れたような低音と、個性が違った二本のフルートの絡み合いが実に魅力的。アイリッシュ・トラッドでフィドルもブズーキもなし、おまけにフロントが笛二人というのは相当に異色ですが(こんな編成、プロでは彼らだけなのでは?)、まったく違和感なくのめりこむことができました。実力に加えて確固とした音楽世界があるからでしょうね。
関係無いけどセーラお姉さまの演奏スタイルは独特ですな。大きな目玉をぎょーろぎょろ、左足をぶーらぶらさせてリズムを取りながらフルートを吹くお姿にしびれましたです。時々昔懐かし王さんの「一本足打法」ばりに、鶴のように左足を高々とあげたまま微動だにせず吹きまくるのです。彼女なりの音楽に対する感応なのでしょうが、見ていてなかなか面白かった。(^
^)

↑精鋭揃いの4人組。セーラさんの「一本足奏法」を撮りたかったんだけどうまくいかなかった。。。
セーラさんが再びアコーディオンに持ち替えて次の曲が始まります。あれ、この曲もアルバムに入ってないや。デンマークがどうやらCDがどうやらとMCで言っていたようだけどうまく聞き取れず。
うわあ、出だしのシンプルでどこか懐かしいようなこのメロディって、なんだかラーシュ・ホルメルみたいだぁ。いーなぁ、こういうの・・・。と思っていたらセーラさんがフルートに持ち替えると同時にまたまた途中で曲が変化してアップテンポのダンス・チューンに。うひょ〜、ノリノリじゃ〜〜〜っ!(^O^) ブライアンさんも笛吹きまくりながら踊っておりますね。髪振り乱して・・・って、一本もないっちゅーに。^^;
引き続いての6曲目は、その名も"Jigs"。"Live
2001"収録の、文字通りいくつかのジグ(3拍子の軽快なテンポのダンス・チューン。元々はイギリス起源らしい)を組み合わせたごきげんでハイホ〜な曲であります。これまたノリノリ♪オレ様の体に二分の一混じったイギリス人の血が騒ぐぜ〜っ(<うそ)。
しかし、ノリノリ攻撃はまだ止まりませぬ。お次は"Live
2001"冒頭でリスナーの度肝を抜いた必殺のハイスピード・ダンス・チューン"Gordon
Duncan's"ですよう〜!!これまた鼻血ものの曲であります。要所要所でばしっ!と決めるブレイクのカッコよさに鳥肌!二人のリズム隊が大活躍ですね。
この曲に限らず、ギターとバウロンのリズムのノリとアクセントの入れ方は実に見事です。フルックの持つ類まれなドライヴ感と緊張感は、バック二人の音楽センスと技量とが生み出しているのでしょう。ファーマーズ・マーケット、タラフ・ドゥ・ハイドゥークス、ルナサ、優れたライヴを見るたびいつも思うことなんですが、アンサンブルの要はやはりリズム隊。リズム隊が二流のバンドに一流は有り得ません。エドさんにジョンさん、このお二人は若いながらも一流ですね。
関係無いけど終始うつむいてわき目も振らずざくざくざくざくギターを刻みつづけるエドさんのプレイ、ルナサのドナさんによく似ていますな。二人とも寡黙だし痩せてるし、とっつきにくそうなところも似てる(でも話したら意外とおもろい人なのかもね)。この二人のセッションなんて見てみたいなぁ。きっとMCなぞ一切無し、最初から最後まで二人してうつむきっぱなしでざくざくざくざく弾きまくるんだろうなぁ。^^;
まだまだ止まらないノリノリ攻撃、8曲目は"Dub"。セーラお姉さまの痛烈なタンギングからちょっとミステリアスなイントロに入るんですが、またもやアップテンポのダンス・チューンにに変化する曲であります。そしてそして、"Live
2001"と同じく演奏後にジョンさんの超絶バウロン・ソロに突入だ〜っ!こ、こりは・・・すんげえ〜〜〜〜。。。(゜〇゜;)
「世界一バウロンがうまい男」とある音楽雑誌で絶賛されたというジョン・ジョー・ケリーさん、第一印象はアメリカ映画によく出てくる「いつもチョコレートばかり食べているおでぶさん」(うひー、失礼!^^;)。今気付いたけど「スタンド・バイ・ミー」に出てくるでぶっちょの子供にも似ているなぁ(またまた失礼!(^-^;))。
しっかし、この方のバウロンは凄いですね!バウロン(Bodhran。ボーランとも)とはアイルランドの伝統的打楽器で、手に持って演奏する片面ドラムであります。演奏方法が独特で、スティックの中央を握って手首を回しながら叩くので、スティックの上下を使って素早く連打することができるわけです。ジョンさんの場合はその連打のスピードがべらぼうに速い上に、プッシュ・ロール(打面の反発を利用して行なうロール。スネア・ドラムで一般的)を使ったりアクセント打法(ロック畑のドラマーがよく使うテクニック。アクセントの強弱を強調することでリズムに変化を生み出す)を多用したりと、技巧が非常に多彩なのですね。また、バウロンは打面を打つ場所を変えることで音色も変えるのですが、そのセンスも抜群。単純な構造のこの楽器の持つ可能性をまざまざと見せつけてくれました。
彼のバウロンさばきはドライヴ、リズム、ダイナミズム重視の、非常にロック的なものに思えました。他のメンバーもそうですが、いかにもロックの洗礼を浴びた若手ミュージシャンらしくトラッドとロックの境界を易々とまたいでいく。同じくロックの洗礼を浴びたリスナーも、だからこそその姿勢に共感を覚え、そのサウンドに共鳴するのでしょう。
アルバムより遥かに長いバウロン・ソロが終わり、感嘆まじりの拍手の中他の3人も加わってばしっとキメ!これで予定の曲目は全て終了したようです。
アンコールを求める拍手と歓声に応えて再び登場したフルックの面々、一転して叙情的な"Bruno"で応えてくれました。セーラさん作曲のこの9曲目、なんか小学校の唱歌やあちらの古い民謡を思わせるような覚えやすく綺麗なメロディですねー。しみじみしちゃいますです。セーラさんの流れるようなアコーディオンが印象的でありました。曲が終わり、歓声の中を舞台裏に引っ込む4人・・・。

↑"Bruno"の演奏シーン。セーラさんはアコーディオンに持ち替えています。関係無いけど4人とも普段着丸だしで、飾り気ない所がまたよいですな。
ふと時計を見れば終演予定の9時はとっくに過ぎている。ああ、もう終わりだろうなーと思いながらも一片の期待をこめて再アンコールの手拍子を叩いていると、おおっ、三たび登場してくれたぞ!多分予定外だったのでしょう、曲を考えていなかったようでリクエストを訊いたりしていましたが、最後の最後に演ってくれたのは・・・おおうっ、「フラットフィッシュ」からの超速リール、"E♭
Reels"ですねっ!!"Jigs"同様いくつかのリール(スコットランド起源の4拍子の軽快なダンス・チューン)をまとめてたばねて一曲にした贅沢なナンバーであります。しっかしこのスピードは一体合体なにごとじゃ!?オレ様の体に二分の一混じったスコットランド人の血が騒ぐぜ〜っ(<大うそ)。
ほとんど人間の限界に近い超スピードのリール、しかしながら一糸も乱れぬそのアンサンブル!4人は一体となり、熱い熱いクライマックスに突入するのです。
スティックも折れよとばかりにバウロンを叩きまくるジョン・ジョー・ケリー!
やっぱりうつむいたまま、抱えたギターでざくざくざくざく大根のように大気を切り裂くエド・ボイド!
セーラ・アレンは左足をぶんぶん振りまわしてアルト・フルートの魅惑の低音を振りまく!
ブライアン・フェネガンは髪振り乱して(だから無いっちゅーに)ティン・ホイッスル吹いては踊りまくる!
・・・熱く激しいラストのナンバーが終わり、やや間を置いて圧倒された聴衆が歓声と拍手をそそぎ、その中を彼らは今度こそ去って行ったのであります。。。
しっかし60分なんてあっという間ですね(実際にはそれ以上やってくれたようですが)。願わくば、次回の来日では単独公演でその魅惑のサウンドを思う存分堪能させて欲しいものです。次も絶対行くぞ、お〜っ!(^O^)/
★終わりに
楽曲、技術、アンサンブル、どれをとっても一流で素晴らしい演奏だったんですが、なにしろ聴衆が少なすぎでしたね〜。ルナサの時もそうだったけど、せっかく白熱のプレイを目の前でやっているのに皆黙ってじ〜〜〜〜っと見てるだけでノリも悪かったし(こりゃもう国民性だから仕方ないけど)、初来日なのにメンバーの方々もがっかりしてしまったんじゃないかとそれが心配で・・・。
こんなに良質なアーティストのライヴが、たった60人かそこらの観客しか見ていないなんてあまりにもったいなさすぎる。アイリッシュ・トラッド・ブームなんていっても本当にメジャーなのはごくごく一握り。実力に見合った評価がされるような世の中になってほしいものであります。。。
(2001.12/30追加アップ)