David Munrow/デヴィッド・マンロウ Britain

●1976年に31歳の若さで夭逝してしまった指揮者/演奏家(リコーダー、クルムホルンなど各種古楽木管楽器)、デヴィッド・マンロウ。現在の古楽復興の立役者と言うべき最重要人物です。「クラシック音楽確立以前の未成熟、未完成な音楽」というそれまでの古楽に対する偏見を改めさせ、その豊かで味わい深い世界を現代に再現したマンロウ。彼があと20年長生きしていたら、現在の音楽状況はもっと違ったものになっていたのではないでしょうか。
古楽器の収集家としても知られていましたが、楽器や楽典の研究家としても一流でした。76年に出版された彼の遺作「instruments of the Middle Ages and Renaissance(中世・ルネサンスの楽器)」は、題名通り古楽器の歴史・奏法・特徴などを緻密に調査した非常に価値ある名著です。現在絶版ですが、古楽や楽器に興味のある方は図書館などでぜひ一度お読みになることをお勧めします。
(2001.11/1)


"Early Music Festival" (Disc1は14世紀頃、Disc2は16世紀頃)
David Munrow演奏・指揮: London Early Music Consort(Disc1は1969年、Disc2は1971年に録音)
中世・ルネッサンス期フィレンツェの息吹を感じられるヒューマンな音楽世界。

 

↑古楽のジャケってこういうジャケばっかりですよね。良い味出してるんだけど区別しにくい・・・。

↑ライナーその1。クリストファー・ホグウッドはともにロンドン古楽コンソートを結成した朋友。

↑ライナーその2。曲の異常な短さに驚かれた方も多いかと思いますが、この時代の音楽、特に世俗音楽は後の時代から考えると信じられないくらい短い曲が多いのです。

↑ライナーその3。ちなみに"anon."というのはanonimusの略。「作者不詳」という意味です。

 

★69年と71年に発表されたアルバムをカップリングした2枚組CD。1枚目は14世紀の、2枚目は16世紀の、フィレンツェ(イタリアン・ルネッサンスの中心地)の音楽を再現したものです。

イタリアン・ルネッサンスの夜明けを迎えた14世紀フィレンツェの音楽を再現したディスク1は、フィレンツェの盲目の才人、Francesco Landini(フランチェスコ・ランディーニ)の曲および作者不詳の曲を中心としたものです。ランディーニは楽器製作者・演奏家・作曲家・詩人・哲学者・天文学者とマルチな才能を発揮した、盛期ルネッサンスの理想像を先取りしたような人物だそうな。
ランディーニさん、@やKのように賑やかな明るい曲もありますが、緩やかなテンポのしっとりとしたB、C、E、Jのような声楽曲のほうで本領を発揮しているように思えます。
作者不詳の曲は実は有名な曲が多くて、AやG、Lなどはどこかで聞いたことがある方も多いのでは?フォークやトラッドでは古楽の曲を取り上げるアーティストが多いので、そのあたりのファンの方はなおさらでしょう。
タイトル通りお祭りの時の世俗曲が多いのですが、Dなどは当時の民衆が踊る姿が目に浮かぶような楽しい曲。わたしゃ古楽でも声楽曲より器楽曲に特に惹かれるのです。う〜ん、ダンサブル!(^O^) トラッドのダンス・チューンと通じるものがありますね。
愛らしいソプラリーノ・リコーダーのソロから始まり一転してレベックやヴィオールなどとのアンサンブルに変わるG、ユーモラスで暖かみのあるサウンドのI、聴いているだけで楽しくなる軽快なOなどなど、短いながらも愛すべき良曲が多いのです。

勇壮な「オルフェオ」というトッカータから始まる2枚目は、盛期ルネッサンスを迎えた16世紀フィレンツェの様々な作曲家、Claudio Moneverdi、Luca Marenzio、Bartolomeo Tromboncino、などの曲を再現したものです。ディスク1から2世紀後、洗練された楽曲が多くなり、また組曲も作られるようになって、後のクラシック音楽に繋がるような部分が見られます。あ、この頃になるとハープシコードが登場していますね(A、C、Fなど)。
"Secondo intermedio""Sesto intermedio"の完成度は、クラシック・ファンにも十分に受け入れられるものだと思います。美しい・・・。
Lなどで聴かれるユーモラスで暖かみのある肌触りは、14世紀頃と何も変わっておりません。廃れてほしくなかったなぁ、こういうサウンドは。。。
パヴァーヌ(ゆったりした2拍子の曲)のNとSもしみじみと良い曲であります。
なぜか作者不詳の曲に惹かれる私は、Rからラストまでのanon.の曲連発のところが大好き。特に最後の"Dance Songs"という寄せ集め曲集^^;は素晴らしいですね!メゾ・ソプラノのJantinaさんの野卑なまでに力強い声に心打たれますです。

中世〜ルネッサンスのフィレンツェ音楽を鳥瞰できるこのCD、古楽ファンだけが聴くには惜しい作品だと思うんですが・・・興味を惹かれた方、どうでしょう?(^ ^)
(2001.11/1)