●Richard Thompson/リチャード・トンプソン(ギター、ヴォーカル、他)、Ashley
Hutchings/アシュレイ・ハッチングス(ベース)、Simon
Nicol/サイモン・ニコル(ギター、ヴァイオリン、ヴォーカル、他)、Martin
Lamble/マーティン・ランブル(ドラム、ヴァイオリン)、Judy
Dyble/ジュディ・ダイブル(ヴォーカル、リコーダー、ピアノ、他)の5人によって66年に結成されたエスニック・シャッフル・オーケストラが、アメリカ人プロデューサーJoe
Boyd/ジョー・ボイドの目にとまりFairport Conventionと改名。67年にIan
Macdonald/イアン・マクドナルド(ヴォーカル)を加えて"Fairport
Convention"でデビュー、これが後にブリティッシュ・フォークの代名詞的存在となるフェアポート・コンヴェンションの誕生だった。
しかしこの時点での彼らは英国民謡の現代的再現よりも、アメリカで当時隆盛だったボブ・ディランやバーズなどのフォーク・ロックやジェファーソン・エアプレインなどの西海岸音楽を強く指向しており、後年の作品群と比べてこのデビュー作は異色とも言えるサウンドになっている。
J・ダイブル脱退後新ヴォーカリストとしてSandy
Denny/サンディ・デニーを迎えたグループは69年に2nd,3rd,4thを立て続けに発表、いわゆるエレクトリック・トラッドのサウンドに変化した。アメリカのフォーク・ロックの影響から脱して独自のコンテンポラリー・ブリティッシュ・トラッドを確立していく過程がこの頃の作品には顕著に表れており、特に3rd"Unhalfbricking"、4th"Leige
and Lief"は名盤として名高い。
69年は、わずか1年足らずのうちにメンバーが激変した激動の年でもあり、イアン・マクドナルドの脱退に始まってマーティン・ランブルの事故死、Dave
Mattacks/デイヴ・マタックス(ドラム、バウロン、他)の加入(4thから)、そして後のフェアポートのサウンドの要となるDave
Swarbrick/デイヴ・スウォーブリック(フィドル、ヴィオラ、ヴォーカル、他)の加入(3rdに参加、4thから正式加入)があった。さらに、4th録音後の9月にはA・ハッチングスがスティーライ・スパンを結成するために脱退し代わりにDave
Pegg/デイヴ・ペグ(ベース、ヴォーカル、他)が加入。続いて看板ヴォーカリストのS・デニーまでがフォザリンゲイに加入するために脱退、バンドは大きな危機を迎える。
翌70年に発表した5th"Full House"はしかし、このような状況にも関わらず4thと並び称される傑作に仕上がった。同時期に残した2枚のライヴ音源"Live at the L.A.Troubadour"(発売は77年)と"House Full"(発売は86年)もまた、この時期のメンバーの演奏水準とテンションの高さが伝わる歴史的な名演である。
しかしメンバーの変動はなおも続き、翌71年に今度はR・トンプソンが脱退する。残されたS・ニコルとD・スウォーブリック、D・マタックス、D・ペッグの4人は、音楽性の変化をみた6th"Angel Delight"、トラッドでは珍しいコンセプト・アルバムの7th"Babbacombe Lee"を発表するが、同年S・ニコルまでもがグループを離れてしまいオリジナル・メンバーは一人もいなくなってしまった。
73年にはTrevor Lucas/トレヴァー・ルーカス(ギター、ヴォーカル)とJerry
Donaheu/ジェリー・ドナヒュー(ギター、ヴォーカル)が加入し、S・デニーもゲストに招いて8th"Rosie"を発表。続く"Nine"では参加しなかったものの翌74年の10thと75年の11thで三度参加、そのヴォーカルを披露している。
76年にはD・マタックス、T・ルーカス、S・デニーの3人がグループを離れる。この時点でのメンバーは、11thから参加したBruce
Rowland(ドラム)にD・スウォーブリック、D・ペッグ、復帰したS・ニコルという構成。14th,15thを発表した彼らは79年の"Farewell,Farewell"を最後にいったんその歴史に幕を下ろした。
81年夏の同窓会的コンサートを開いて一時的な復活をしたフェアポートは、夏にオクスフォードシャーのクロップレディで開催される野外フェスティヴァルを次第に恒例化する。そしてS・ニコル、D・ペッグ、D・マタックスを中心に85年の"Gladys'
Leap"で再結成されたフェアポートは、後にRic
Sanders/リック・サンダース(フィドル)やMartin
Allcock/マーティン・オールコック(ギター)を加え、卒業生やゲスト陣を交えながら現在に至るまで英トラッドの大ベテランとして活動を続けているのである。
(2001.11/27)
| Discography(正規アルバム) ※発売年、タイトル、レーベル |
1968 "Fairport Convention" Polydor
1969 "What We Did on Our Holidays" Hannibal
1969 "Unhalfbricking" Hannibal
1969 "Liege and Lief" A&M
1970 "Full House" Hannibal
1971 "Angel Delight" Island
1971 "Babbacombe Lee" Island
1973 "Rosie" Island
1973 "Nine" A&M
1974 "A Fairport Live Convention" Island
1975 "Rising for the Moon" Island
1976 "Gottle O'Geer" Island
1977 "Live at L. A. Troubadour" Island
1977 "The Bonny Bunch of Roses" Vertigo
1978 "Tipplers Tales" Vertigo
1979 "Farewell, Farewell" Simon's
1982 "Moat on the Ledge" Stony Plain
1985 "Gladys' Leap" Varrick
1986 "House Full" Hannibal
1986 "Expletive Delighted!" Varrick
1987 "Heyday: BBC Radio Sessions, 1968-1969"
Hannibal
1987 "In Real Time: Live '87" Island
1989 "Red & Gold" Rough Trade
1990 "The Five Seasons" Rough Trade
1993 "25th Anniversary Concert" Woodworm
1995 "Jewel in the Crown" Green Linnet
1996 "Old-New-Borrowed-Blue" Green Linnet
1997 "Encore, Encore" Resurgent
1998 "Close to the Wind" Mooncrest
1999 "Cropredy 98" Woodworm
1999 "The Wood & The Wire" Woodworm
2000 "Wishfulness Waltz" Mooncrest
2000 "Live at Open Air Burg Herzberg,Germany-16th of July
1999" Think Progressive
2001 "Live" Polygram
| Discography2(コンピレーション、BOX、未発表音源、リテイクなど)※発売年、タイトル、レーベル |
1972 "History of Fairport Convention" Island
1972 "Manor LP" [Not Released] Island
1976 "Fairport Chronicles" A&M
1981 "The Airing Cupboard Tapes 71-74" Woodworm
1984 "A T 2" Woodworm
1986 "Other Boot"
1987 "It All Comes Round Again"
1988 "The Best of Fairport Convention" Island
1992 "Bonny Bunch of Roses/Tipplers Tales" Vertigo
1994 "25th Anniversary" Woodword
1994 "From Past Archives" Rough Trade
1997 "Who Knows Where the Time Goes?" Woodworm
1998 "Woodworm Years" Resurgent
1998 "Fiddlestix 1970-1984: The Best of Fairport" Raven
1999 "Cropredy" Mooncrest
1999 "Meet on the Ledge: The Classic Years..." A&M
2000 "Encore Encore: Farewell Tour" Relix
2000 "AT2/The Boot" Woodworm
2001 "Close to the Wind [Bonus Tracks] "Sanctuary/Troj
2001 "Full House [Remastered] "
"Full House"/「フルハウス」(1970年、5th)

↑味のあるえ〜ジャケットや・・・。

↑曲目、編成、使用楽器。プロデューサーはお馴染みジョー・ボイドさん。
★70年の5th。解説をご覧いただければわかるように、このアルバム製作時のフェアポートは、飛ぶ鳥を落とす勢いだった前年に比べてまさにどん底、もうぐちゃぐちゃであります。誰が誰やらわからんくらいにメンバーが激変し、おまけにトラッド博士のアシュレイさんは「おらもっと真面目なトラッドがやりたいだ」とばかりに脱退、挙句の果てに看板娘のサンディさんまでが「もうトラッド歌うのに飽きちゃった、あは♪」とばかりに(?)脱退。普通ならここで解散しちゃってもちっともおかしくない。
んが!ここからが残されたメンバー達の本領発揮だったのですね。背水の陣で製作したこの作品、並のバンドなら駄作で終わるところなのに何がどーなってしまったのか恐るべき完成度。フェアポートの長く複雑な歴史の中でも最強布陣だったという評価の高い5人のサムライ達、開き直った彼らが作り出したこのアルバムは一切の無駄のない凛と引き締まった演奏で、青白いオーラが立ち昇ってくるような凄みがあります。一聴して感じる張り詰めた緊張感、荘厳と言いたくなるほどの格調の高さ。前作"Liege and Lief"が「柔」の傑作ならばこちらは「剛」の傑作、てなもんでしょうか。
フェアポートに、というより英フォーク、トラッドに興味があるのなら、決して避けては通れない不滅の名盤。男の魂、ここにあり!
(2001.11/27)
"House Full"/「ハウス・フル」(1986年、19th)

↑このジャケを見て「なんか地味そ〜う」と思ったあなた。そりゃ大間違い!まぁ確かに地味なジャケだけどね。^^;


↑「マティ・グロウヴズ」を聴いて死ぬが男の本懐よ。。。
★86年に発表された19作目。発表された時期はずいぶんと遅いのですがこのライヴが録音された時期が問題なのです。そう、タイトルからわかるように「フルハウス」完成直後のライヴ録音。意気上がるツワモノ5人衆がロサンゼルスで大暴れした貴重な記録がこの「ハウス・フル」なのであります。
それにしてもこの70年の布陣は強力でした。前年に加入したデイヴ・マタックスは「やつが録音に加わった作品は必ず傑作に仕上がる」と言われたほどのドラマーだったし、同じ時期に加入したデイヴ・スウォーブリックはフィドル、ヴォーカルともに一流だった。ギターの名手リチャード・トンプソンは「歌はへたくそ」と言われていたんですが、サンディ脱退後を受けて仕方なくヴォーカルを取ったこの時期にヴォーカリストとしても急成長、サンディが歌った名曲を違った味わいで聴かせます。サイモン・ニコルもまたリチャードに匹敵する技量のギタリストだった。そしてアシュレイの後任ベーシストのデイヴ・ペグはハード・ロック畑のベーシストで、オーディションの時に他のメンバーを唖然とさせたほどの腕前。プロデューサーのジョー・ボイドをして「技術だけならアシュレイを凌ぐ」と言わしめた凄腕プレイヤーだったのです。
マタックス&ペグの巖のごとき強力なリズム隊に支えられ、ニコル、トンプソンのギターがうなり、スウォーブリックのフィドルが駆け抜ける。トンプソンとスウォーブリックの渋いヴォーカルも素晴らしい。
この時期のフェアポートはトラッド寄りだった3rd,4thから一転、ばりばりのロック・バンドと言ってもいいくらいですね。そんじょそこらのハード・ロックなぞ問題にもならないこのダイナミズム、この演奏力、このテンション!5人のとんでもないバトル・ロイヤルが思う存分堪能できる作品であります。
のっけの@「サー・パトリック・スペンス」から始まって全曲これ以上ないほどのベストプレイですが、疾走感全開のインスト・ナンバーB「トス・ザ・フェザーズ」やF「メイスンズ・エイプロン」、ギターとコーラスの美しさが印象的なC「スロス」、横ノリのうきうき楽しいD「スティンズ・モリス」なんかが特にわたしゃ大好き。そしてそして"Liege and Lief"収録の名曲E「マティ・グロウヴズ」の火花飛び散る凄まじい演奏!どひ〜〜っ、こりゃもうやばいよ死人が出ちゃうよう〜〜〜っ!!(^_^;;;)
「フルハウス」と表裏一体のこの作品、「フルハウス」が青白いオーラを発する名作ならば「ハウス・フル」は真っ赤な炎を吹き上げる名演、というところでしょうか。
同時期のライヴを録音した姉妹アルバム"Live
at L. A. Troubadour"とあわせて3枚1組で味わうのが贅沢な聴き方かも。んでもテンションの上がりすぎにはご注意♪(^
^)
(2001.11/27)
★テンションが高い演奏と言えば、先日マリーナ号さんも絶賛なさっていたフェアポートのハウスフル。
6曲目に入っているMatty Grovesの演奏は素晴らしいですねー。こういう演奏も聴いていてたぎってしまって仕方ないです。
全盛期のZEPのライブでの「死にかけて」で聴かれるジミーのギターなんかにも通じる熱さや同じ毛色の音を感じて震えちゃいますよ。おお〜エゲレス〜ミュージックベリ〜グ〜。
ジャンルなんてそう問題じゃないですね。音楽って・・・。熱い魂からほとばしるものなんだなあ・・なんて、つくづく思っちゃったりします。
(2001.12/29 by michiyoさん)