●70年代から現在に至るまでブリティッシュ・フォーク、トラッド・シーンで活躍し続けている女性シンガー。スティーライ・スパンの元ヴォーカリストとして有名だが、旧友Tim
Hart/ティム・ハートとのデュオ作品、June Taber/ジューン・テイバーと組んだシリー・シスターズ、自身のソロ、そして古楽グループ・カーニバル・バンドとの一連の作品と、精力的な活動を行っている。
また、その美声と歌唱技術に魅せられたミュージシャンは数多く、そのため上記の活動以外にもゲストで参加したアルバムが非常に多い。アルビオン・カントリー・バンド、アルビオン・バンド、マーティン・カーシー、ティム・ハート、ジャック・ザ・ラッド、スティーブ・アシュレイ、リチャード&リンダ・トンプソン、ラルフ・マクテル、フランキー・アームストロングなどの英フォーク、トラッドの作品、ジェスロ・タル、マイク・オールドフィールド、マンダラ・バンド、スティタス・クォーなどの英ロックの作品、様々な作品群で彼女のヴォーカルを聴くことができる。
1947年、ロンドン郊外のSt. Albansに生まれた彼女は成長するに従い次第に自国の伝統音楽に興味を示すようになった。セシル・シャープ記念館でのEwan
MacColl/イワン・マッコール(英フォーク・リヴァイヴァル運動の推進者)との出会いがその後の彼女の音楽世界を決定付ける。68年には当時のボーイ・フレンドだったティム・ハートとのデュオ作"
Folk Songs Of Olde England Vol. 1"を、翌年には"Folk
Songs Of Olde England Vol.2"を発表している。
2人はフェアポート・コンヴェンションを脱退したAshley Hutchings/アシュレイ・ハッチングスと出会い、彼らが中心となってスティーライ・スパンが結成された(同時期に活躍したフェアポート・コンヴェンション、ペンタングルと並んで「英三大トラッド・バンド」と称された重要グループ)。以後彼女はこのグループのヴォーカリストとして活躍しその名を高めることになる。
ちなみにA・ハッチングス脱退後に同グループに加入したベーシストRick
Kemp/リック・ケンプは、後に彼女の夫となる人物である。
76年にはスティーライの活動と並行して、英トラッド・シンガーのジューン・テイバーと組んでシリー・シスターズを結成、1stアルバムをリリースする。このアルバムは内容もさることながらジョニー・モイニハン、アンディ・アーヴァイン(共に元スウィニーズ・メン)、ダニ―・トンプソン(元ペンタングル)、マーティン・カーシー(元スティーライ・スパン)、などの豪華ゲストがバックをサポートしたことでも著名。
彼女のソロ活動への契機は78年のスティーライ・スパンの解散だった。解散後の同78年に初のソロ・アルバム"Woman
In The Wings"を、矢継ぎばやに2nd"Changing
Winds"を発表。英フォーク界、英ロック界からの錚々たるゲスト陣の協力によって作成されたこれらの作品はいずれも好評を博した(1stではジェスロ・タルのメンバー達が、2ndではChris
Stainton、B.J. Cole、John O'Connorなどが参加)。
またMike Oldfield/マイク・オールドフィールドの"Incantations"、マンダラ・バンドの"The
Eye of Wender"にゲスト参加したのもこの年。この頃からフォーク、トラッド・シーンだけでなくロック・シーンからも注目を集めるようになる。
80年にスティーライ・スパンは再結成され彼女も再びヴォーカリストとして迎えられたが、その後もバンド活動と並行してソロでの活動を続ける。87年には古楽バンドのカーニバル・バンドとも組み、こちらでは古楽にこだわったアルバムを発表し続けている。
古巣のスティーライ・スパンでは英トラッドを、カーニバル・バンドではヨーロッパの古楽を、そして自らのソロではオリジナル曲を。この時期の彼女は非常に多忙であり、酷使しすぎたために喉を痛めてしまいしばらく休業を余儀なくされるほどであった。
2000年にはソロ活動に専念するために遂にスティーライ・スパンを脱退。現在はカーニバル・バンドとソロとで活動を続けている。
ソロ作においては97年の6th"Flesh &
Blood"からアイオナのNick Holland/ニック・ホランド(キーボード)、Troy
Donockley/トロイ・ドノックリー(ギター、イーリアン・パイプ、ホイッスル他)の2人を招き、以降は常に両者と共に作品作りを行っている。2002年3月には彼らとの3人編成で初めての来日公演を果たし多くのファンを喜ばせた。
(2002.4/2)
| Discography(正規アルバム) ※発売年、タイトル、レーベル |
1978 "Woman In The Wings" Chrysalis
1978 "Changing Winds" Chrysalis
1982 "Hooked On Winning" Plant
Life
1983 "Going For Glory" Spindrift
1993 "Year" Park
1997 "Flesh & Blood" Park
1999 "Ravenchild" Park
2000 "Ballads and Candles" Park
2001 "Arthur the King" Park
| Discography2(ベスト、コンピレーション、未発表音源など)※発売年、タイトル、レーベル |
1995 "Memento" Park (ベスト)
| 関連公式サイト |
・Maddy Prior
Eduardo Motaなる人物によるマディ・プライアの公式サイト(英語のみ)。最新ニュース、バイオグラフィー、ディスコグラフィー、フォト・ギャラリー、歌詞紹介、ライヴとアルバムのレビュー、コンサート・スケジュール、彼女からのメッセージ紹介など。
・Steeleye Span
スティーライ・スパンの公式サイト(英語のみ)。最新ニュース、バイオグラフィー、ディスコグラフィー(シングルやメンバーの作品群も含む)、バンド名の詳細な由来、フォト・ギャラリー、ソング・ブック(曲の背景や歌詞など)、歴代メンバーの紹介、ライヴ・レビューなど、非常に密度の濃いサイト。
"Woman in the Wings"(1978年、1st)

↑シンプルなジャケット。この人の作品は大体そうですが。

↑全曲彼女の作詞作曲であります。

↑編成、使用楽器。すげえゲスト陣ですな。おお、当時のジェスロ・タルのメンバーが勢揃いじゃ!(^O^)
★マディ・プライアの初ソロ・アルバム。これ以前にも古くからの友人ティム・ハートと組んだデュオ作やジューン・テイバーとのデュオ作を発表していますが、ソロ作品としてはこれが初めてです。
彼女はデュオ作でもスティーライ・スパンのヴォーカリストとしても英国民謡を中心に歌ってきたトラッド・シンガーですが、ソロでは彼女自身のオリジナル曲が中心になっています。スティーライやデュオ作品の活動を通して培ってきたトラッドのテイストを基調とした叙情性豊かな作品が多いですね。
この作品ではジェスロ・タルのフルートおぢさんイアン・アンダーソンがプロデュースを買ってでており、C"Gutter
Geese"では一聴してそれとわかる例のツバ吹きフルートまで披露しております(一瞬声も聞ける)。他の曲でも当時のメンバーが大活躍してるので、マディ・プライアに興味がなくてもタル・ファンは一聴の価値あり、かも。
この時期前後には同レーベル(クリサリス)ということもあってライヴでスティーライ・スパンがジェスロ・タルの前座を勤めたことがしばしばあり、そのためもあって両グループは仲が良かったそうな。今考えるとちょっと意外な感じですが、タルは作品によってはかなり英トラッド色が濃いし、そのあたりもウマが合ったのでしょうか?そーいやスティーライの6th"Now
We are Six"(74年)もイアン・アンダーソンがやはりプロデュースをしていたし、そのお礼もあってかジェスロ・タルの"Too
Old to Rock'n Roll : too Young to Die!"(76年)にはマディ・プライアがゲスト参加していましたっけ。
で、このアルバムですが、@のタイトル曲がなにしろ素晴らしい。ゆったり流れるような美しくドラマティックな曲で、マディlさんの美声爆発であります。叙情的な演奏もヴォーカルを引き立て盛り上げ、言うことなし。感動的な曲じゃ〜。。。
シリアスな曲調から一転して激しいロックになるA"Cold
Flame"もけっこう好き。
前述のC"Gutter Geese"は妙に印象に残る曲。たおやかな曲調とツバ吹きフルートとのギャップが面白いですね。
軽快で伸びやかなD"Rollercoaster"で息抜きした後はバラッド調の格調高いE"Deep
Water"。異色の曲F"Long Shadows"はちょっと笑っちゃいます。(^
^)
トラッド・ソングかと思うような3拍子のG"Rosettes"。この曲も大好き。春の草原に遊ぶような牧歌的でほのぼのした曲です。
最後のジャズ風のJ"Baggy Pants"もまた異色の曲。彼女のアルバムでこんな曲が聴けるとは発表当時誰も予想していなかったのでは?
こうやって全曲通してみていくとバラエティ豊かな作品で、今までやりたかったことに貪欲にチャレンジしている感があります。でもこれでも足りずにすぐに2ndを発表するわけで、この方の旺盛なチャレンジ精神とバイタリティの強さには感服いたしますです。
個人的な好みから言えばマディさんのソロ作はこの1stと続く2ndが愛聴盤なのであります。90年代の作品になると、う〜〜〜ん、いまひとつ心にこなかったりするんですが。。。
ともあれマディさんのソロはポップ色が強いので、スティーライやカーニバル・バンド、各種デュオ作などよりも聞きやすく一般向けだと思います。フォーク、トラッドには関心のない方にも聴いて欲しい1枚であります。
(2002.4/2)
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