「あんた、ダレ!?〜牛丼屋編〜」
(語り部・鉄の目キリコ)


以前ある牛丼屋でバイトをしていた時の、我が生涯の中でも屈指のぽやん談であります。

こういう飲食店にはありがちな話ですが、私らはバイトがない時でも店にやってきてはタダで牛丼食べ食べ世間話をして帰る、ということをよくしていたのですね。無論店長がいる時はそんなことはできやしませんが、私らは店長不在時の夜のシフトに入っていたので、こーいうアバウトなことが出来たわけであります。

その時のバイト仲間でM君という友人がおりました(今でも付き合いはある)。彼はその辺のお笑い芸人など問題にならないくらいの天性のギャグ・メーカーでして、一緒にいるといつでもどこでも大笑い、本当に楽しいやつなのです。真面目なんだかとぼけてるんだかわからない芸風を持ってまして、彼がそこにいるだけでなんだか空気が楽しくなる。「笑いのオーラ」のようなものを常に身にまとっている稀有な人物で、わたしゃ彼のことが大好きなのです。(^ ^)

さて、私がその店でホール係(接客する係ね)をやっていたある夜のこと。自動ドアが開くと共に数人のお客さんが入ってきました。おっ、その中にM君の姿が。「またタダで牛丼食いに来たんだな〜(^ ^)」と思い、目線で合図を送ったんですが、彼はすっとぼけて気付かないフリをしているのです。も〜そのわざとらしい態度だけで私はおっかしくておかしくて、思わず吹き出しそうになっちゃったのですね。
で、他のお客さんの注文を取ってM君の席に近づいたんですが、やつはまだそらっとぼけている。私が目の前に立っても、白々しく横なんぞ向いちゃってのほほんと澄ました顔をしておるのです。そのオトボケ加減がまた面白くて、私は笑いを噛み殺しながらいつものように軽口を飛ばしたのです。「おいおい、な〜にすっとぼけてるんだよっ!ど〜せ牛丼食いに来たんだろ〜!?(^O^)」

・・・その瞬間、M君はぎょっとしたように目をまん丸にして私のことを見つめました。そして「あ、あのう・・・じゃ、並を、ひとつ・・・」と呟き、恥ずかしそうに黙ってうつむいてしまったのです。
予想外の反応に驚いた私は、彼の顔をまじまじと見かえしてみて・・・そして、やっと気付いたのです。
「べ、別人じゃ〜〜〜〜〜っ!!( ̄□ ̄;)」

そう、私がM君だと信じて疑わなかったその人は、でんでん関係ないただのお客さんだったのであります。(-。-;
もう私は真っ赤になってしまいまして、「は、はい、並ですね?かかか、かしこまりましたあ〜っ」としどろもどろに応えて彼の前から逃げ出してしまいました。

・・・えー、言い訳するわけじゃないんですが、わたしゃ目がとても悪いのですよ。しかも性に合わないもんだから普段はメガネをしない。とはいえ、後で考えれば背の高さも全然違ったし、いくら顔が似ているとはいえ何でこんな特大ぽやんをかましてしまったのか未だによくわかりませぬ。(=_=;)

そのお客さんには会計の時に汗だくになりながらよく謝っておきました。彼も「あ、べべ、別に、気にしてませんから・・・」と言ってくれたのですが、その後そのお客さんが来店することは二度となかったのであります。
(2001.12/1)

 

 

 

 

 


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